大規模修繕工事を成功させる「ウレタン塗膜防水」

「ウレタン塗膜防水」とはどんな工法?

ウレタン塗膜防水とはどんな工法?

 

集合住宅改修工事に頻繁に使用される塗膜防水ウレタン塗膜防水です。

 

ウレタン塗膜防水は、1960年代半ばから多くの防水工事で施工されており、信頼される防水工法と呼べます。

 

公共工事でも、「X-1 : ウレタン塗膜防水通気緩衝工法、X-2 : ウレタン塗膜防水密着工法(メッシュシート仕様)」として仕様が適用されています。

 

一般的な施工方法は、こてやヘラ、広い範囲ではレーキ(グラウンドを均したり、床面の水を掃けたりするT字の道具を想像して下さい)などを使用する「手塗り」です。

 

手塗り工法ほど歴史はないですが、専用の吹付け装置を搭載したトラックを利用し、防水箇所へウレタン材を圧送して施工する「吹付け」する工法もあります。

 

 

<施工方法は?><ウレタン塗膜防水の施工方法は?>

 

ウレタン塗膜防水には、大きく分けて2種類あります。

 

前述しました、通気緩衝工法密着工法です。

 

下地内部に水分を帯びている恐れがあるならば通気緩衝工法を採用し、その可能性がないと判断され、下地調整後に直接塗り物が出来るのなら密着工法を採用します。

 

 

一般的には、通気緩衝工法の場合は大抵、

 

①下地の清掃・補修

 

プライマー塗布

 

③緩衝シート設置

 

④脱気筒設置

 

⑤ウレタン防水材を2回塗り

 

トップコート塗布 

 

という具合で流れていきます。 

 

 

通気緩衝工法の詳細は、「絶縁工法とはどんなもの?」の記事に記します。

 

下地内部に水分を帯びている恐れがある時に、直接ウレタン塗膜材を塗って密着させるのではなく、通気層になるシートを一枚敷くことで、上にウレタン塗膜が施工されてもその通気層を水分(蒸気)が行き来でき、設置されている脱気筒から逃がすことができるというものです。

 

ウレタン塗膜防水の上位版です。

 

 

密着工法の場合は大抵、

 

①下地の清掃・補修

 

②調整

 

③プライマー塗布

 

④ウレタン防水材を2回塗り

 

⑤トップコート塗布

 

という具合で流れていきます。 

 

 

既存床面がコンクリートモルタル・ウレタン塗膜の場合、または下地調整をして施工可能になった場所などに適用します。

 

 

 

<どんな場所に施工するか?>

 

ウレタン塗膜防水は、シームレスな(継ぎ目のない)仕上がりを形成するため、架台やハト小屋などの役物が多い防水面で効果を発揮します。

 

又、屋上とは分離独立した階段室、塔屋エントランス、共用廊下などの狭い屋根、もしくはハト小屋の上部やパラペット、窓の庇(ひさし)などの狭小部は、塗り物である塗膜防水を一般的に使用します。

 

通気緩衝工法に関しては、シンダーコンクリート押さえコンクリート)などで下部に水分が残っているような箇所に施工します。

 

 

 

<ウレタン塗膜防水のメリットは?>

 

上で述べたような狭い場所にわざわざシート状の防水を施工すれば、シートを細かく切る・端部を金物で固定する・シートの重なり部に注意するなど、沢山の手間がかかります。

 

又、架台や立上りなどの入隅出隅は入り組んでいるので、シートの重なり部をかなり入念に施工しなければなりません。

 

シートの重なり部があるという事は、その部分に少なからず雨水が浸入する可能性があるということです。

 

その点、塗膜防水は塗装と同じ様な塗り物なので、材料を練って施工箇所に持っていき、塗るだけですので、狭い箇所や立上りが入り組んだ防水面で重宝します。

 

また、アスファルト防水のように火気を使用する事がない、シート防水のようにボンドを施工面・シートの裏面に塗布する手間がない(プライマーは塗ります)、機械的固定工法のようにアンカービスを打ち込む音はない、他の工法と比べて軽量な工法なので建物にやさしい、などの利点もあります。

 

その他のメリットとして、少量の凹凸があっても厚みを付ける塗り物なので、施工後は平坦に出来る事が多いです。

 

 

 

<ではいいことばかりなのか?>

 

「施工箇所に塗るだけで、継ぎ目のない防水層が出来るのだから、シート防水なんてもういらないじゃないか」と思いますが、長所があればやはり短所もあります。

 

「少量の凹凸があっても大丈夫」と前述しましたが、あまりに下地の凹凸が違いすぎますと、不均一な防水層が出来上がります。

 

例えば他の箇所が既定の厚みと満たしているのに、一部で所定の厚みを確保できないと、その部分は数年後に際立った劣化が起こる可能性があります。

 

極端な例を出しますと、バルコニーの溝をウレタン防水材で埋めてしまった場合、見た目は床面と溝はフラット(平滑)になっています。

 

これが経年すると、溝の端や溝と床面の境目でひび割れが生じてきます。

 

明らかな厚みの違いによって、伸びたり縮んだりの大きさが異なり、その繰り返しによって破断するものと思われます。

 

ちょうどコンクリートとモルタルが、物性の違いで伸縮の巾が異なり、剥がれてしまうのと似ています。

 

 

上の話とは別に、平らな場所で施工する場合も、シート防水と違って現場で厚みが決まるので、規定より薄く施工される可能性が高いです。

 

特に塗り物なので、未熟な作業員が見様見真似で施工する事があります。

 

こてやヘラを使用せず、刷毛ローラーで伸ばして塗布していき、「色が付いたらいいから、塗装の模様付けよりも楽だ」なんていいなさる。

 

「餅は餅屋」ということわざがあるように、防水工事は防水会社や改修工事の実績を多く持つ会社に頼みたいです。

 

また、未熟な作業員にしても、しっかり現場の経験を重ねて防水の勉強をして資格をとるなりして、腕を上げていって頂きたいです。

 

 

また、ウレタン防水材自体は紫外線に弱いので、トップコートの塗替えを3~5年おきにされることが望まれます。

 

トップコートが劣化、またはなくなったあとの防水材の劣化は早く進むので、定期的な点検とトップコートの塗替えは欠かせません。

 

 

これらのメリット・デメリットを踏まえて上手に付き合えば、非常に有効な防水工法なので、利用しない手はないです。

 

ウレタン塗膜防水がいい防水なのはわかった!
では知らないと後々後悔することとは・・?
→ 「ウレタン塗膜防水の欠点・デメリット」

 

 

 

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