ゴムシート防水の欠点・デメリット
ゴムシート防水とは、合成ゴム系のシートを使用した防水システムであり、密着工法、絶縁工法共に仕様があります。
1枚のみで防水層を形成することが出来るゴムシート。安価なわりには優れた追従性や耐久性をもっておりますが、やはりいいことばかりではなく、注意しなければならないこともあります。
ここでは基本的な工法である「密着工法」について考えていきます。
<鳥害を受けやすい>
山が近い場所に位置するマンションの屋上がゴムシート防水の場合、カラスなどの鳥からシートに穴を開けられていることが多いです。
<写真>
ゴムシート表面に無数の穴が開いている。
<写真>
ゴムシート防水の立上り部に開けられた大きな穴。
写真は2枚とも、近くに山があるマンションです。
上の写真は、鳥のくちばしでつつかれたのではという穴ですが、下の写真は明らかに鳥のなしたことです。
立上り内部には、植物の種が無数に見つかりました。
いたずらでしているのか、あとで使用するために貯蔵庫にしているのか、鳥獣博士ではないのでそこまではわかりませんが、ゴムシートやウレタン塗膜防水などのやわらかい材質は鳥害をうけることが多いです。
これを抑制する対策は、今のところ鳥除けの人形をつるす、鳥除けのだんご等の薬品を使用する、その他の防水(アスファルト防水や塩ビ系シート防水)に替えてしまうなどです。
人形は期待できません。
鳥除けのだんごの効果は未知数ですが、試される価値はあると思います。
実績などを考慮して信頼出来る業者に現場を見ていただくのもいいと思います。
防水層自体を替えてしまうのは、抜本的な対策といえそうですが、下地や納まり、金額等を考慮に入れて検討するべきです。
鳥が運ぶ種による屋上の植栽?
→ 屋上の謎の植物
<角や隅の施工が難しい>
シート自体の防水性は優れていますが、屋根の納まりや施工の仕方次第で、しっかりした防水層を形成できない場合が出てきます。
<写真>
トップライト付近のゴムシートの納まり。シーリング材を薄く塗り付けたのみの納まりになっているため、経年で防水能力がなくなっている。
<写真>
上の写真のシートをめくったところ、雨水が入り込んでいた。
上の写真は、トップライトがある屋上にゴムシート防水が施工されている様子です。
通常、防水層は200㎜以上の高さの立上りがないと、防水層内部に水が入りやすくなります。
ここではトップライトのガラス面の高さが、床面より100㎜もないので、立上りが低い状態であり、シート防水を施工するとすればいい納まりは期待できません。
(では解決方法はないのか?
→「防水施工の不具合(ゴムシート防水の上にウレタン塗膜防水)」 で見つかるかもしれません。
それでも解決できそうにない場合は、完全に塗膜防水(通気緩衝工法など)にしてしまうか、トップライトを無くして完全に防水層にしてしまうなどの方法を考えなければならないでしょう。)
ちなみに、もし立上りが200㎜以上あったとしても、端末処理をシーリングのみに頼っていれば同じ結果になります。
その場合は、シートの端末を押え金物で押えてシーリング処理を行い、上部に水切り金物を設置するなどの処置が必要です。
立上り高さががある程度あって、端末の納まりがきちんとしているとして、さらに問題になってくるのが、床面と立上りの取り合い部分の出隅(でずみ)角です。
初めの写真でみれば、下のほうの穴がぱっくり開いている箇所です。
この現場では、ここもシーリングに頼った納まりをしていました。
トップライトの出隅角に合わせて切れ目を入れ、コンクリートに貼り合せてシーリングを上から塗り付けるといった施工がなされていました。
出隅角であるにもかかわらず、仕上げのシートを施工する前の「増し張りシート」が施工されていなかったのです。
増し張りシートってなに?
シート防水の場合、床面のシートに切断部(切り込み)があれば、重大な漏水事故につながる恐れがあります。
万が一でもそのような施工になってしまう場合、またそうでない場合でも、写真の様な出隅角または入隅、排水ドレイン廻りや、やむをえず床面から配管を出してしまうような場所などは、仕上げのシート防水の前に増し張りのシートを貼り付けます。
この増し張りには、非加硫ゴム系のシートを用います。
非加硫ゴム系のシートとは、通常の屋根のゴムシート防水(加硫ゴム系)とは異なり、コンクリートへの接着力が強く、かつ柔軟で、シート同士の接合性が強く一体化するため、漏水の恐れがある箇所への補強張りに適しています。
そのような知識を持っていない施工業者がいるというのが現状です。
<写真>
階段室屋根のゴムシート防水の納まり。
<写真>
階段室屋根のゴムシート防水の納まり。
上の2枚の写真は異なる現場ですが、両方とも階段室屋根にゴムシート防水を新築時に取り入れています。
狭い場所なので、通常はモルタル仕上げか塗膜防水を施すような箇所です。
納まりが入り組んでいるので、1枚仕上げのシート防水では、まともな仕上がりにならないと思います。
改修時は、シートを全面撤去し、下地補修・調整のあとに、塗膜防水処理が望まれます。
<写真>
階段室屋根を塗膜防水で仕上げた様子。
<ラップ部が劣化しやすい>
ゴムシート防水密着工法の接着のし方は、下地、ゴムシートの両面にボンドを塗布することによる張り付けです。
ラップ部(シート同士の重ね部)の巾は、100㎜以上で施工していきます。
ラップ部も、下地とシート間同様に、ボンドによる張り付けになります。
このとき、重ね合わせの先端部には、ブチルテープを入れて水密性を高めます。
しかしそこまでしても、10年前後経つと接着が剥がれてくることがあります。
どんなにゴムシートの防水性が強くても、シート間が劣化してしまえば防水性能が損なわれてしまいます。
施工の仕方や環境によっても違いはありますが、定期的に点検することが望まれます。
<写真>
ゴムシート防水の立上り部が剥離した様子。
<写真>
ゴムシート防水の平場シート間に剥離が起こり、雨水の浸入がみられる。
<傷付きやすい>
合成ゴム系のシートは、通常1.0㎜から2.0㎜の厚さで、上を歩くことを前提としていない「非歩行」です。
工事業者が点検のために、底がやわらかい靴を履いて歩く程度しかできないようになっています。
鳥がつついた場合以外にも、何かに傷つけられたような箇所を確認することがあります。
その様な時は、他に重大な劣化がなければ、部分補修で穴を塞いで様子をみます。
鳥害でなければ、頻繁に増えることはありません。
<写真>
ゴムシート防水に付いたキズ。
<写真>
ゴムシート防水層に付いたキズ。数ヶ所ある。
基本は一枚仕上げ、薄くて傷つきやすいですが、そういう恐れがない場合と、入り組んだ納まりではない場合は、安価であり、有効な防水工法であります。
その特徴をしっかり理解して、他の工法と比較検討してみることをおすすめいたします。
ゴムシート防水は、やっぱり優れた工法です。
→ ゴムシート防水の長所・利点とは?」
防水改修の「相性」は、理解しないと大変な事になる!
→ 防水施工の不具合(ゴムシート防水の上にウレタン塗膜防水)」
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