大規模修繕工事を成功させる「シンダーコンクリートの劣化・不具合」

シンダーコンクリート(押さえコン)、5つの主な不具合とは?

シンダーコンクリート(押さえコン)、5つの主な不具合とは?

 

 

屋上を歩行する為、また防水層を保護(劣化を抑制)するために、コンクリートを打設する事があります。

 

このコンクリートを「シンダーコンクリート」、または防水層を押さえるので「押さえコンクリート」、さらに防水層を保護するので「保護コンクリート」などといいます。

 

名前が長いので、シンダーコン、押さえコン、保護コンと略して呼ぶことも多いです。

 

 

大抵、新築時にアスファルト防水の熱工法を施工した上から打設するのですが、地域によってはゴムシートなどの上から施工することがあります。

 

しかし数年後にシートが破断する可能性が高いので、ゴムシートは止めた方がいいでしょう。

 

このシンダーコンクリートも経年で劣化したり、施工時の不具合が時間を経て出てきたりします。

 

それはどういう時でしょうか。

 

 

シンダーコンクリートの主な不具合は、

 

①表面のひび割れ
②立上り躯体を破壊
③伸縮目地の飛び出し
④立上り防水層に「しわ」 
⑤内部への浸水

 

の5点です。

 

 

①表面のひび割れ
コンクリート自体が劣化する場合は、表面のみの劣化の場合と、不規則にひび割れが生じている場合があります。

 

表面劣化は単に時間が経ったのでいずれにせよ起こるものですが、不規則なひび割れは、コンクリートの施工精度の問題が出てきます。

 

要因として、骨組みとしてのワイヤーメッシュが適切になされていない、伸縮目地付近の植物繁茂の影響、コンクリート厚の不足などが考えられます。

 

このコンクリート厚の不足は、後程でてくる「モルタル土台」のところで述べます。

 

若し、ひび割れがひどく、コンクリートが隆起しているような状態ならば、上から防水工事を行う事が出来ないので、その部分、または全体的なコンクリート撤去の必要が出てきます。

 

撤去したコンクリートは産業廃棄物としてゴミになるので、なるべく撤去しないやりかたが出来ればそれが一番いいです。

 

 

②立上り躯体を破壊
シンダーコンクリート自体ではなく、その周囲も劣化します。

 

シンダーコンクリートには、およそ立上りハト小屋廻りから400mm~600mm、中間では3000mm間隔程度で伸縮目地が設置されています。

 

本来コンクリートは、温度が高いと膨張し、寒いと収縮します。

 

よって屋上に設置される押さえコンクリートは、ただ広範囲に打設されると、伸縮を繰り返して割れます。

 

また、膨張したときに防水立上り部分を押して、大きく損傷させてしまいます。それを防ぐ為に設置されているのが伸縮目地であり、コンクリートだけでなく、防水層、そして建物を守る役割も果たしているわけです。

 

   →具体的な改修の考え方はこちら

 

 

③伸縮目地の飛び出し
このように大事な伸縮目地ですが、コンクリートに押されて表面に飛び出ていることがあります。

 

膨張したコンクリートに押し出された結果として、仕事を全うしていると言えば聞こえがいいですが、表面に飛び出てしまえばもう、邪魔なだけです。

 

人が歩く際にはつまずいてしまいますし、防水改修の段階でも処理をしないと新規の防水層を設置できません。

 

 

 

保護コンクリートの伸縮目地が浮き出ている。要因として、材料の反り・コンクリートの膨張等が考えられる。

<写真> 

押さえコンクリートの伸縮目地が浮き出ている。要因として、材料の反り・コンクリートの膨張等が考えられる。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伸縮目地の浮き出し。材料の反り、コンクリートからの押し出しなどが考えられる。

<写真>

伸縮目地の浮き出し。材料の反り、コンクリートからの押し出しなどが考えられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

立上り防水層に「しわ」 
あと、気になる不具合として、防水層立上りの「しわ」があります。

 

既述したように、伸縮目地を設置しないと、立上りコンクリートを損傷させてしまう可能性があります。

 

しかし上に書いた間隔で伸縮目地を設置しても、防水層の立上りに「しわ」が寄ったり、ひどい時は防水層が切れたりすることがあります。

 

これらもやはり、コンクリートに「押されて」なる不具合ですが、原因は大きく二つあります。

 

一つは、伸縮目地を設置していても、立上り防水層と床面の押さえコンクリートが直付けになっている場合です。

 

押さえコンクリートが立上り防水層に付いていると、コンクリートが高温で膨張したとき、立上り防水層を押してしまい、押し上げてしわを作ったり、場合によっては防水層を破断してしまいます。

 

二つ目は、伸縮目地の土台が「モルタル」の場合です。

 

今は各材料メーカーから、アスファルト防水層に直接ブチルテープで設置するものが出ていますが、以前はモルタルによる土台を作って、その上に伸縮目地を乗せるという工法がありました。

 

しかしこの工法ですと、上の伸縮目地ではコンクリートの膨張を吸収することができるのですが、下のモルタルは硬いので、下は「伸縮しない」状態になり、立上りに不具合を起こしたり、割れたりします。

 

また、モルタルが下に盛られている伸縮目地近くのコンクリートは、モルタルの厚みのせいで自分が厚くなれず、弱いのでひび割れを起こしてしまうということもあります。

 

   →具体的な改修の考え方はこちら

 

 

⑤内部への浸水
そして特筆すべきシンダーコンクリートの劣化は、「水の浸入」です。

 

時間が経つと、シンダーコンクリートの伸縮目地、または端部の立上りとの取り合い箇所、その他劣化箇所などから雨水が内部に浸みこんでいきます。

 

下層にはアスファルト防水層があるので直ぐには漏水とはならないでしょうが、万が一防水層が破断して、躯体コンクリートにひび割れやジャンカなどがあれば漏水に至る可能性も十分あります。

 

 

 

押えコンクリートの伸縮目地からエフロレッセンス(白華現象)が起こっている。コンクリート内部に浸水していることが分かる。

<写真>

シンダーコンクリートの伸縮目地からエフロレッセンス(白華現象)が起こっている。コンクリート内部に浸水していることが分かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上のように、シンダーコンクリートの不具合は様々です。

 

これらを踏まえ、シンダーコンクリートへどのような防水改修を施すのかを、次の記事で考えていきます。

 

 

 

※年配の方々を中心に、押さえコンクリートのことを、「シンダーコン(シンダーコンクリート)」 とよく呼んでいます。昔はコンクリートを軽くするために、石炭の燃えカス(石炭殻)を骨材として混ぜていたようで、その呼び名です。
今は代替材料があり、石炭もとれなくなったので、正式にはシンダーコンではないのですが、昔の名残でそれが通称になっているようです。

 

この記事を書くまで知らずに使っていました。
まだまだ精進していきたいです。

 

 

こんな問題だらけのシンダーコンクリート。
果たして改修することはできるのか・・?
→ 「シンダーコンクリートの防水改修はどうする?」

 

シート防水での改修はどのようにするの?
→ 「シート防水の絶縁工法を知りたい」

 

 

 

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