水が入らない端末納まりとは(いろんな不具合と改修工法)
防水工事では、「端末の納まりをどのようにするか」で工事の出来不出来が決まります。
前途の記事に、パラペットなどの「あご」に水切りがない場合、防水層の立上りが低い場合の事例を挙げて、対処方法を考えてみました。
ここでは、それ以外の納まりの不備、それに対する処理はどうすればいいのかを考えていきます。
<笠木上のシート防水の納まり>
<写真>
笠木の上でゴムシート防水の端部を皿型の押え金物で固定している。シーリング材の劣化に伴い、雨水が入り込みやすい納まり。
<図1>
笠木上の防水シート端末を皿型の押え金物で固定している断面図。
上の写真は、あごがないパラペットの笠木上で、ゴムシート防水の端末を押え金物で固定している様子です。
図で見れば分かりますが、薄く打たれた右側のシーリング材は比較的早く劣化します。
金物内部のシーリング材は、右側のものよりも劣化の進行は遅いですが、金物の左側は塗装面で、雨水を受ける状態です。
大抵パラペットの勾配は、外側から内側へ傾いているので、これだと降雨時に左端に降った雨水は金物の左端に溜まります。
そうすると雨水は金物内部にも時間をかけて浸水し、シーリング材の劣化を引き起こします。
この納まりを解消するには、大きなL型の水切り金物を使用します。
<図2>
笠木の先端に設置するための、防水シート押え金物。通常の押え金物とは異なり、外壁側からの雨水の浸入を防ぐ事ができる。
図2では、大きなL字型の押え金物で防水層の端部を押えています。
この納まりですと、外壁側から雨水が浸入することがなくなります。
又、紫外線や雨水に当たることがない、内部のシーリング材も健全な期間が長いです。
金物裏側にあるタイルのゲタのような出っ張りも、雨水が入ってくるのをブロックします。
<塗膜防水で納めたほうがいい>
<写真>
エレベーター機械室の屋根の一部。入り組んだつくりの箇所に、ゴムシート防水が施工されていた。
エレベーター機械室の屋根であり、高架水槽その他の設備があり、架台がたくさん入り組んでいます。
まさに職人技といえる施工でしたが、エレベーター機械室への漏水が確認され、立上りと床面の防水シートの重ね合わせ箇所に隙間があり、内部のブチルテープも接着力がなくなっており、補修がなされました。
入り組んだ防水層というのは、勾配調整も難しく、水上(みずかみ)と思われる場所になぜか水がたまったりします。
改修の際は、既存防水シートを全面撤去し、可能ならば勾配調整をおこない、新しい防水には塗膜防水の施工が望まれます。
入り組んだ複雑な形状の場所は、やはりシート防水よりも塗膜防水の方が施工しやすく、シームレスなので不具合が生じた際はシート防水のようにシートの継ぎ目を調べていくという難しさがなくなります。
<写真>
屋上床面からエレベーター機械室への階段。ゴムシート防水が1段目の蹴込みにかかっている。
<写真>
屋上床面からの階段の1段目に立ち上げたシート防水の端末シーリング材。著しく劣化が進行している。
初めてこの納まりをみたときは、滅多に見れるものではないと思いましたが、結構目にします。
階段がある屋上に、シート防水を施工したので、蹴込みまでシートを貼ったという納まりです。
階段や壁を流れる雨水は防水端末のシーリング材の上を容赦なく流れていきます。
端末シーリング材にどうすれば雨水が行かなくなるかを考えることが重要ですので、この場合も考えます。
<図3>
シート防水と塗膜防水を併用する際の納まりの例。
あごがないハト小屋などでも使える方法ですが、階段を塗膜防水で改修し、床面のシート防水との取り合いを図のように納めれば、シート端末に雨水が行くことは防げます。
シーリングも塗膜防水を被せれば、健全な状態を長く保てます。
他にも、シートを立上りの手前までもってきて金物とシーリングで処理し、その上から塗膜防水を施すという施工もあります。
異種の防水を重ねるので、プライマーの選定に注意が必要です。
正式な方法は、各メーカーのカタログ・仕様書を参考にして下さい。
前途しましたが、どんなにいい職人さんを連れてきても、いい防水仕様を選定しても、端末の納まりが不適当な防水層は、欠陥品と考えられます。
仕様同様、納まりには細心の注意を払って頂きたいです。
その他の、知っておいて損はない「端末の話」
→ 「水が入らない端末納まりとは(水切りの不足)」
→ 「水が入らない端末納まりとは(立上りが低いときの対策)」
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