アスファルト防水の5つの利点・5つの欠点
建物の屋上に上って床の防水層を見たとき、1メートルくらいの巾のシート状のものを張り合わせていて、表面がゴツゴツ・ガザガザしていたり、細かい石の様な模様が入ったものは、「アスファルト防水」です。
アスファルトと聞いて、真っ先に思い浮かぶものは「道路の舗装」だと思います。あれも「アスファルト舗装」といって、砂利などの骨材にアスファルトを混ぜて道路に敷かれているのです。
そもそもアスファルトとは?
アスファルト(瀝青)とは、原油から重油、ガソリン、灯油などを精製したあとの残りで、「油」の一種です。油なので水をはじきます。よって防水材としても使用されるようになりました。
古くは紀元前3800年ごろから防水材、接着剤などの用途で使用されており、現在に至っていることを考えると、その信頼性は並のものではない事がうかがえます。
アスファルト防水で使用されるロール状のシートのことを「ルーフィング」と呼び、古紙や不織布などにアスファルトを浸透・被覆させて加工されます。
単に「アスファルト防水」という場合、アスファルト溶融釜で溶融したアスファルトコンパウンドによって、このルーフィングを何層も張り合わせていく工法で、 「アスファルト防水熱工法」といわれます。
アスファルト防水熱工法は、古くから施工されている工法で、溶融釜を搬入することができる新築工事で主に用いられ、防水工事全体の半数近くを占めます。
熱工法の利点は多数あり、
●古くから用いられている工法だけあって信頼性が高い
●それ自体が防水性を持つ「溶融アスファルト」によって何層もアスファルトルーフィングを重ねていく事で高い防水性を有する
●耐用年数の長さ(20年程度)
●施工後に押さえコンクリートなどを施工できる
●施工後直ぐに防水性能を有する などがあります。
逆に課題としては、
●低温下ではもろく、下地の動きに弱いため、挙動がある下地は不向き
●溶融釜を用いるため、火災・やけどなどの危険性が高い
●アスファルトコンパウンドの臭いがきつく、苦情が来る場合がある
●床面に関しては、ルーフィングを張る人、溶融アスファルトを柄杓(ひしゃく)で流す人の2人作業になる
●施工費が高い などがあります。
いくつかの課題点があるにも関わらず、今日まで防水工事の主体として採用されてきた点から、高い信頼性が感じられます。
新築工事では圧倒的に用いられるアスファルト防水熱工法も、改修工事や修繕工事になると、途端に息を潜めます。
要因は、いくつかの課題からお察しされるように、溶融釜や燃料を補給するドラム缶、さらに他の工法よりも多量のルーフィングを施工箇所に揚重(ラフタークレーンなどを使って資材などをあげること)しなければならない大変さがあります。
他には、溶融アスファルトの臭いがきついので、人が住んでいるところや他の建物が隣接している場所では困難な事などがネックになるようです。
そこで、改修工事でもアスファルト防水が無理なく出来ないかということで、開発されてきたのが、 「改質アスファルトシート防水」です。
改修工事でも多く採用されるこの工法については、「改質アスファルトシート防水とは?」の記事で記していきます。
メリット以上にデメリットを知ることで改修工事の成功に近づく。
→ 「改質アスファルトシート防水 3つの主な工法」
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