水が入らない端末納まりとは(立上りが低いときの対策)
端末の納まりをどのようにするかは、防水改修工事の出来を大きく左右します。
全てのマンションが、新築当初から納まりが非常によく、下地との相性のみを考慮すれば仕様は完璧だということはありません。
高い確率で、新築の際に無理な納まりになり、ひどい場合は新築時から漏水に悩まされているなんてことがあります。
改修工事のプロとして、大規模修繕工事でこれまでのマンションの悩みを少しでも減らしたいものです。
ここでは、防水層の立上りが低い建物の事例を、その場合の対処方法と一緒に見ていきます。
<写真>
アスファルト防水露出工法の立上り。10㎝程度しかない。
<写真>
アスファルト防水露出工法の立上り。鋳物の排水ドレインと同じ高さしかない。
<写真>
アスファルト防水露出工法の立上り。10㎝程度しかなく、あごも長いので、金物設置が出来ない。
上の3枚の写真は、いずれも防水層の立上りが低く造られてます。
激しい雨の日は、跳ね返りの雨水が防水層端末のシーリング材(3枚目に関しては直に防水層)に影響を与えます。
<図1>
防水層の立上りが低いと、暴風雨などの日に防水層端末に及ぼされる影響は大きい。
又、万が一排水ドレインの性能が落ち、雨水が溜まっていけば、短時間で防水端末が雨水に飲み込まれてしまいます。
漏水保証を出すのならば、これらの立上りに何らかの処置をして、少しでも安心できる納まりにしたいものです。
解決方法は、立上りを高くすればいいのです。
<図2>
上にあごがある部分の低い立上りに関しては、レンガやモルタルなどで埋めて、上部まで防水層を持っていくなどの納まりが必要である。
上にあごが付いている場合は、現状の形のままでこれ以上高さを変えるのは困難なので、あごを切り取るか、埋めるかの選択です。
作業性・廃棄物・騒音等を考え、あご下を全て埋めてしまう方が無難です。
そしていままでのうっぷんを晴らすかのように、上方まで(笠木の場合は先端まで)新しい防水層の立上りを持っていきます。
<図3> やむを得ずシート防水の立上りと塗膜防水を併用するとき、イ型の水切り金物を用いて納める。
上の3枚目の写真は、パラペットではなく設備架台です。
したがって上部は塗膜防水が望ましいです。屋上全体をウレタン塗膜防水にするのなら問題ないのですが、仕様がシート防水の場合、どこかで縁を切ることを考えます。
このとき、イ型の水切り金物を利用します。
あご下を埋めてしまい、シート防水端部に溝を切ったあと、その部分の上方までシート防水を被せます。
そしてイ型の水切り金物で固定したあと、上から塗膜防水をかけます。
もちろん、シーリング材に塗膜防水を被せることで、シーリング材の劣化を抑制できます。
金物の上部まで防水材をかけるときは、プライマーの相性を考慮しましょう。
<図4>
低い立上り防水層を撤去して、上方に溝切りを施し、イ型の水切り金物で納める。
図4は最初の写真のように、あごがない状態で立上りが非常に低いときの対処法です。
この場合は、立上りを上げたいところまでの壁面は、おそらく塗装仕上げやタイル面だと思います。
どちらにせよ、立上りがフラット(平滑)になるように、タイル面の撤去・樹脂モルタルでの調整などの処置により下地を作ります。
そして立上りの高さにしたいところに、サンダーにて溝を切りそこまで防水層を持っていきます。
最後に水切り金物で防水層を押ます。
出来れば端末シーリング材まで壁面塗装をかけると、シーリング材の「もち→寿命」が違います。
防水の立上りは、最低でも30cmは欲しいところです。
10cm程度の低い防水立上りを確認したのならば、大規模修繕、もしくは屋上の防水改修工事の際に、安心できる立上りに変更しませんか。
その他の、知っておいて損はない「端末の話」
→ 「水が入らない端末納まりとは(水切りの不足)」
→ 「水が入らない端末納まりとは(いろんな不具合と改修方法)」
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