大規模修繕工事を成功させる「シート防水の絶縁工法」

シート防水の絶縁工法を知りたい

シート防水の絶縁工法を知りたい

 

防水工法には広く2種類あり、接着剤などにより全面に密着させる「密着工法」と、
下地と新しい防水層の間に通気層を作る「絶縁工法(通気工法などともいうこともある)」があります。

 

塩化ビニル樹脂系シート防水(以下、塩ビシート防水)や、加硫ゴム系シート防水(以下、ゴムシート防水)などの合成高分子系シート防水にも、密着工法と絶縁工法があります。

 

これらのシートの絶縁工法には、主に「機械的固定工法」が採用されます。

 

 

機械的固定工法とは、他の記事でも書いておりますが、新しい防水層(シート)を、鋼製ディスクや鋼板、ビスなどによって「機械的」に設置していく工法です。

 

下地にびっちり張り付けてしまわないので、下地内の水分を効率よく逃がす事が出来ます。

 

また、通常の絶縁工法は、ある程度下地をきれいにしてから、乾燥させてから施工するのですが、機械的固定工法は極端な話、下地に水たまりがあっても、それらをある程度排水すれば、もう施工できるのです。

 

なぜそんなことができるのか―― 

 

それは同じ絶縁工法でも、下地に接着剤や自着層を使って直接張り付ける工法とは違い、先に下地へ固定した鋼板やディスクにのみ、シートを設置していくからです。

 

ここで既存の下地がアスファルト防水シンダーコンクリートなどゴツゴツして固い場合、新しいシートを傷つけてしまうかもしれません。

 

それを抑制するために、防水シートと同じくらいの厚みのクッション性のあるシート(絶縁シートといい、防水機能はない)を一枚はさみます。 

 

下地の状態は関係なく施工できます。

 

また、先にシートを敷いてからディスクを設置する場合も、ディスクでのみ固定されるので、下地は関係ありません。

 

注意しなければならないのは、下地の状態は関係ないといっても、ゴツゴツしすぎる、または突起物があると、絶縁シートでも破れてしまうことがあるので、突起物、の除去などある程度は下地の処理をする必要があります。

 

あと、下地が水たまりになっているときにアンカービスのための穴を開けると、漏水の危険性がありますので、それらを考えた施工が必要です。

 

 

鋼板やディスクにどうやってシートを着けるのか――

 

先にシートを敷く場合の考えは簡単で、鋼板やディスクで上から固定すればいいのです。

 

先に鋼板やディスクを固定したらどうするか。

 

2通りの方法があり、一つはライスター(熱風溶接機)や溶着材を使って、シート裏面を溶かして鋼板などに溶着させる方法です。

 

ボンドなどを利用して接着させる方法とは異なり、どちらかというと金属同士を溶かして接合させる「溶接」に似ています。

 

溶接ほど強くはないですが、ボンドで接着させるより強度はあります。

 

 

二つ目は、「誘導加熱装置」というちょっと特殊な装置を使って、下のディスクと上のシートを引っ付けてしまう」という方法です。

 

「加熱」という言葉が入っているので、上のシートを熱してディスクにつけるのか? いやいや、シートの表面も溶けてしまうだろ。ならどうやって――?

 

 

実はシートを熱するのではなく、下のディスクを熱するのです。

 

熱されたディスクの熱で、裏面を溶かされたシートがそのままディスクと溶着されてしまうのです。

 

 

どうやって表面にあるシートを熱さずに下のディスクを熱するなんてことが出来るのか――

 

 

 

この不思議な誘導加熱装置、実は「IHクッキングヒーター」と同じ仕組みなんです。

 

いきなりここでIHクッキングヒーターが出てきて面食らうでしょうが、ちょっと寄り道します。

 

IHとは、Induction Heating (誘導加熱)の略で、IHクッキングヒーターは、「電磁調理器」のことです。「電磁」ということで、磁力が関係してきます。

 

 

IHクッキングヒーターがあるキッチン――。お鍋を置いてスイッチオン。

 

ここで機械の中で何が起こるかというと、鍋底にあたる部分にドーナツ状のコイルがありまして、それが磁力線を生みます。

 

その磁力線が金属であるお鍋の底に電流を発生させます。

 

電流が金属内を流れる際に抵抗を受けるのですが、その抵抗が「熱」になります。

 

そしてお鍋を温めることができ、美味しい料理が可能になるのです。

 

説明がヘタで「なんのことやら」とお叱りをうけるかもしれませんが、簡単にすると「磁力で金属を発熱させる」のです。

 

磁力を発生するコイルと金属である鍋の間には、強化ガラスがあるのですが、この強化ガラス自体は機械に熱されることはありません。

 

鍋がなくなった跡を触ったら熱いですが、それは鍋が乗っていたからです。他のガラスの部分は熱くないんです。

 

すごい事を考え出す人がいるものですね。

 

 

 

場面は防水工事に戻ります。

 

これと同じ原理で誘導加熱装置は、磁力線を発生してシート下部の金属性ディスクを熱します。

 

あっつあつになったらその熱によりシートの下部が溶けます。熱するのを止めて、上から押えてディスクとシートが溶着するのを手助けします。

 

そして上から見たら、シートにディスクのドーナツ状の形が出たら溶着がしっかり出来ている状態です。

 

誘導加熱装置は、メーカーによって多少違いがありますが基本は一緒で、「ディスクを温め終わりましたよー」というお知らせをきちんとしてくれます。

 

以上が機械的固定工法の概略です。

 

誘導加熱装置を使用するのは、ほぼ塩ビ系のシートの場合ですが、メーカーが研究と改良を重ねて、ゴム系のシートでも出来るようになってきました。

 

改質アスファルトシート防水にも機械的固定工法がありますが、こちらはディスクでシートを押える工法になります。

 

普通に接着剤などにより貼り付けないで、こんな特殊なやり方をするには、それなりのメリット(利点)があるのです。

 

同様に、注意しなければならない点もいくつかあります。

 

それらの事も後日、記事にて記していきます。

 

 

下地が悪すぎてあきらめていた防水改修にも対応!
→ 「機械的固定工法のメリット」
 
しかし知らないとすぐ不具合が起こる
→ 「機械的固定工法の短所・課題」

 

 

 

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