屋上の水たまりを直すために

屋上の水たまり、どうやって直す?

屋上の水たまり、どうやって直す?

 

 

屋上にできる水たまりの要因は、「設計・施工時の目測の誤りやミス」であると考えられます(「屋上に水たまり。なぜ?」参照)。

 

常に水に浸っていると防水層も劣化することから、「水たまりがあっても大丈夫」という訳ではないことは分かりました。

 

ではどのように考えれば、水たまりはなくなるのでしょうか。

 

防水改修工事を行う際に、以下の順序で進めていきます。

 

 ①どこに水たまりがあるかを把握する。
 ②図面と現場を見て、現状の水勾配を把握する。
 ③水勾配を補正する。

 

 

<①どこに水たまりがあるかを把握する。>

 

水たまりの場所を既に把握しているのであれば必要のないことです。

 

それでも、その場所以外にもひょっとしたら水たまりがある可能性がありますので、注意してください。

 

確認するのに一番いいのは、雨が降ったあとです。

 

マーカーなどで印をすれば、あとで分かりやすいです。

 

雨が降っていない時に確認したいのならば、水を流してみるのもいいでしょう。

 

しかし屋上が広い場合は、ちみちみ流しても埒が明きません。

 

水を流す手段を取るときは、防水改修工事を始める前の、「高圧洗浄」がいいでしょう。

 

洗浄で使用した水はどんどん流れていきます。

 

その中でも勾配がおかしな箇所には、水たまりが出てきます。

 

雨や高圧洗浄がない時も、長年に亘り水たまりができていれば、水たまりの跡があるはずです。

 

 

さあ、水たまりがどこに発生するかは確認しました。

 

次は屋上全体の水勾配が、「どうなっているか」です。

 

 

 

<②図面と現場を見て、現状の水勾配を把握する。>

 

図面を確認します。屋上の平面図です。

 

おそらく、矢印(→)で水勾配が記入され、山になった高いところ「水上(みずかみ)」から谷になった低いところ「水下(みずしも)」へ水が流れるように表されています。

 

面積が狭い屋上は、単純に片側から反対方向へ流れるように勾配が取られていることがほとんどです。

 

 

 

 

小面積の屋上の水勾配例。

 

<図>
小面積の屋上の水勾配例。
勾配の山(水上)から水下へ水が流れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

広い屋上での水勾配の例。

 

 

<図>
広い屋上での水勾配の例。
水上から水下へ流れる様に勾配が取られている。

 

 

 

 

 

 

 

 

屋上の水勾配例。 中央の山(水上)から、排水ドレインがある溝まで平行に流れる。

 

<図>
屋上の水勾配例。
中央の山(水上)から、排水ドレインがある溝まで平行に流れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

面積が広い場合は、屋上の中央を「山」にして、端部のパラペットへ水が流れるようになっていることでしょう。

 

そして水勾配の終点はドレインであり、雨樋を通って屋上の外に流れていきます。

 

この水勾配、図面で理想的に書かれていても、実際の屋上はそうなっていないことも多々あります。

 

「図面通りになっていない」という論外な場合もあります(図面がひどく、現場で改善した場合は別です)。

 

図面通りになっているようでも、例えば微妙な凹凸がある、勾配ではなく平坦に見える箇所がある、という箇所もあります。

 

なんにせよ、図面の確認と現場の目視することで、どのような勾配になっているかを把握することが出来ます。

 

若し、それでも実際の勾配がわからなければ、オートレベルとスタッフ(なければコンベックスなど)を使用して高低差を計測する方法があります。

 

オートレベルとは、建築や土木の現場で使用される、各測定点の高さを測る計測機器です。

 

よく現場で仕事をしている人が、三脚を立ててその上の黄色い望遠鏡みたいなもの(これがオートレベル)で、その先に立てられた赤白の棒の目盛りをのぞいているのを見たことがあるでしょう。

 

そしてその赤白棒がスタッフです。スタッフは慣れた人でないと目盛りを読むのは困難なので、コンベックスにします。

 

三脚上で、水平にセットされたオートレベルで、計測したい点の床面から伸ばしたコンベックスの目盛りを読みます。

 

一番高い(勾配の山)と思われる箇所を基準にし、他の箇所も測っていきます。

 

特に、水たまりができる箇所の周囲は、入念に高低差をみます。

 

数値を表に書いていき、平面図に高低差を書き込んでいけば、水勾配の全体像が見えてきます。

 

 

ここでレベルを据える際に気を付けることは、三脚を立てるときに防水層を傷つけないようにすることです。

 

三脚を固定させるために、各脚の先端部分を足で踏んで下地に食い込ませるのですが、これを防水層でやってしまってはダメです。

 

押さえコンクリートや屋上出入り口のコンクリート部に立てるか、若しくは防水層上に立てる場合は、防水シートの切れ端を何枚か下敷きにするなどの方法をとります。

 

あと、コンベックスを持つ人は、真っ直ぐ立っているかを確認します。

 

若し目盛りが斜めになっていると、適正な値を読むことが出来なくなります。レベルを読む人も、真っ直ぐになるよう、手で合図します。

 

ここまでで水勾配は把握できました。

 

次はどうやって水勾配を直していくかを考えます。

 

 

 

<③水勾配を補正する。>

 

水勾配を直すには、現状によって主に3つの方法に分かれます。

 

ひとつは盛り上がった箇所の場合です。

 

その場合は、サンダーなどで盛り上がりを除去します。

 

手順としては、水たまり部分をはさんで、水勾配の上と下で「たこ糸」を結びます。

 

下地が盛り上がっているので、たこ糸は真っ直ぐではなく、上に隆起(りゅうき)してしまいます。

 

「ある会社は、小型の電動ピックを用いて表面を斫り取り、凹んだところをモルタルで調整した」という話を聞きましたが、躯体を著しく傷つけてしまうので、あまりやりたくありません。

 

サンダーにて表面を削り取り、たこ糸を張り勾配を確認しながら、モルタルにて調整していくことが望まれます。

 

 

次に凹み部分に水たまりができる場合です。

 

塗膜防水材を充填したらいいんじゃない?」といって、ウレタン系の塗膜防水材を流し入れた現場を見ました。

 

いいアイデアかと思われるかもしれませんが、解決には至っていませんでした。

 

水たまりが埋まるのに、なぜダメなのか。

 

通常のウレタン防水は、施工すると平らになるように納まります。

 

ですので、凹みはなくなるけど勾配は付かないという状態になります。

 

そして、また水がたまりだしたということです。

 

では、立ち上がり用の硬いウレタン系塗膜防水ならどうか。

 

これは試したことはありませんが、もしかするとうまくいくかもしれません。

 

それでも固まるまでに流動するので、硬化促進剤などを利用するとよいでしょう。

 

若しウレタン系塗膜防水を使用するならば、あまり深い凹みは避けるべきです。

 

防水材の厚い箇所は、周囲との伸縮性の差などにより、剥離することが考えられます。

 

 

と、ここまで硬い塗膜防水材で直るのでは? と話しましたが、実際にやったことはありません。

 

それは、やはりモルタル(厳密にいうとポリマーセメントモルタル)での補修が、施工性もいいですし、安心だからです。

 

ポリマーセメントモルタルにて勾配補正をする場合は、既存の防水層を部分的に撤去し、ポリマーセメントモルタルを充填しながらたこ糸などで水勾配を確認します。

 

勾配補正が終わりましたら(乾燥させてください!)、防水層の部分補修、若しくは被せ工法による全体改修を行います。

 

 

三つめは、全体的に水勾配が歪んでおり、広い範囲で行わなければならないケースです。

 

根本的にやり直す場合は、既存の防水層を撤去し、仮防水ひび割れの補修を行いつつ、たこ糸により水勾配を確認しながら調整していきます。
「仮防水 しないとどうなる?」参照)

 

勾配の高低差がある場合はいいのですが、勾配が小さい(1/100程度 →「屋上に水たまり。なぜ?」参照)ことが原因で起こる場合は、上流の山部分を、勾配がきつくなるように、高くする必要があります。

 

三角屋根ではないですが、中央の山部分から、玄関やベランダがある広い方向(平側)に、きつい勾配で水が流れるようになっている屋上があります。

 

そういう屋上も、ドレイン付近に大きな水たまりがあることが多いです。

 

 

 

 

ドレイン付近に水たまりができた屋上。 ドレイン付近の水勾配が不十分なのが原因。

 

<図>
ドレイン付近に水たまりができた屋上。
ドレイン付近の水勾配が不十分なのが原因。

 

 

 

 

 

 

 

こういう場所も勾配を作ることで、水たまりを解消できます。

 

 

 

 

ドレイン付近の水勾配を補正。

 

<図>
ドレイン付近の水勾配を補正。

 

 

 

 

 

 

 

 

この水勾配補正の作業、防水層を撤去するので、いくら仮防水を行うといっても、雨が多いときは避けた方が無難です。

 

 

 

水たまりをなくすための水勾配の補正の話をしましたが、慣れない人が行うと、新たな水たまりをこしらえてしまう恐れがあります。

 

慎重な調査と計画、適切な施工で、建物と防水層の長寿命化を目指しましょう。

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