改質アスファルトシート防水 工法と長所・短所

改質アスファルトシート防水 3つの主な工法

改質アスファルトシート防水 3つの主な工法

 

「アスファルト防水とは?」では、アスファルトとは、アスファルト防水とは何かを記してきました。

 

一般的なアスファルト防水熱工法は、いくつかの課題を抱えているため、改修工事ではあまり採用されません。

 

そこで、改修工事でもアスファルト防水が無理なく出来ないかということで開発されてきたのが、「改質アスファルトシート防水」です。

 

改質アスファルトシートとは、合成高分子系材料(合成ゴムやプラスチック)を混入することで、性能を高めたアスファルトルーフィングです。

 

熱工法で使用されるルーフィングとの決定的な違いは、

 

 ●シート自体の性能が向上したので、1~2層で防水層を形成できる
 ●施工方法を改良したので、溶融釜や重油のドラム缶を施工箇所へ揚げる必要がない
 ●床面に関しても、一人でルーフィングを張り付けることができる

 

などの点です。

 

主に3種類の工法がありますので、どのようなものがあるのかをみていきます。

 

 

<トーチ工法>
まずは、トーチで裏面を炙(あぶ)れば溶融アスファルトが出てきて、それによって張り付けていく「トーチ工法」があります。

 

改質アスファルトシートの裏面に、トーチで炙れば溶融アスファルトになる層を設け、現場でルーフィングシートの下面を炙りながら、出てきた溶融アスファルトによってそのままルーフィングシートを張り付けていきます。

 

熱工法と比較すると、格段と手間が省かれ、金額も抑えられているので、改修工事ではよく利用されています。

 

課題点を挙げれば、

 

 ●炙り不足による施工不良が多い。  これに尽きます。

 

トーチの強火で炙れば、ものすごく溶融アスファルトが溶けだしているものと思われるときでも、そんなに溶けていない場合が多く、シート端部などが張り付いていないことが原因でそこから水が浸入しての漏水事故が起きています。

 

トーチ工法で注意する点は、

 

 アスファルトコンパウンドをしっかり溶融させて張り付けていく(少しシートの外に溶融アスファルトがはみ出るくらいがいい) 
 ●上記のことを習熟している作業員が作業・指導に当たる  です。

 

 

<常温工法(冷工法)>
二つ目に火気を原則使用しない、「常温工法(冷工法)」があります。

 

常温工法には、二種類の方法があり、ルーフィングの裏面に、改質アスファルト系の自着層(粘着層)を設け、ロール状に巻かれた状態から剥離紙を剥ぎながら下地に張り付けていく工法(A)と、アスファルト系の塗膜防水材によって、ルーフィングを張り付けていく工法(B)です。

 

(A)の自着層付の工法の場合、原則的に火を使うことはないので、火災・やけどなどの心配は少なく、層の厚さを均一に保てる点などが利点として挙げられます。

 

しかし課題点もあり、
●剥離紙の処理が煩(わずら)わしい。
●密着させるために、転圧を十分にしないとならない。
●(密着シートの場合)粘着力が強いため、空気が入らないように注意しなければならない。
●気温次第で、密着しない場合がある。
  という点です。

 

粘着層がある限り、剥離紙の問題とは切っても切れない関係であることでしょう。 
自着層であるが故の欠点も出てきます。 こわいのが、「トーチ工法」の<炙ったつもり>と同様に、<張り付いたはず>で起こる不具合もある事です。

 

それらの課題、またそこから生まれる問題に 対処するために、

 

 ●剥離紙が風で飛散しないよう、その都度適宜処分する。
 ●転圧作業を怠らない。また、密着の場合は空気が入らぬよう注意する
 ●気温が低すぎる際の作業は控える
 ●作業部位によってはトーチ(バーナー)を併用する  

 

などの点に注意するべきです。

 

(B)のアスファルト系の塗膜防水で張り付けていく工法の場合、こちらも火気をほぼ利用しないので、火事・やけどの心配や、近隣へのにおいなどの心配もありません。

 

この工法での課題は、

 

 ●塗膜防水の施工は、気温に注意しなければならない   です。

 

通常のウレタン塗膜防水エマルション系塗膜防水などとは異なり、アスファルト系塗膜防水は粘性が高く、低温時は特に取扱が難しいので、

 

 ●作業前日には、低温になる場所へは置いておかない  などの工夫が必要です。

 

 

<BANKS工法>
張り付けたルーフィングの表面を炙りながら、次層を張り付けていく防水工法です。

 

同じようにルーフィングを炙りながら張り付けていく工法に「トーチ工法」がありますが、決定的な違いとして、「既に張り付けたルーフィングを炙る」ことが挙げられます。

 

これにより、トーチ工法よりも「溶融アスファルトを確認しやすくなり、施工性が向上」しました。 アスファルトが溶けているのがよく見えるのです。

 

しかし、それでも習熟した職人が作業・指導をしていないと、密着不足による施工不良が起こります。それと、平場立上り両方とも、1層目は自着層において下地に張り付けるため、温度や施工方法に気を配りながらでないと、密着不足を起こします。その辺りは、その他の防水工法と変わりはありません。

 

BANKSは、防水メーカー「Tルーフィング」が開発・販売している防水工法のブランド名です。
防水業界を代表するメーカーだけあって、常に業界をリードしている感があるので、課題点は後々克服していくでしょう。

 

 

以上、改質アスファルトシート防水の概要と施工にあたっての課題・注意点を話してきました。

 

アスファルト防水を改修でも使用できるようにしたこれらの工法は、防水改修の選択肢を大幅に増やしてくれました。

 

アスファルト防水の信頼性、その耐候性などを考慮し、その他の防水工法と比較して選定の対象にしてはいかがでしょうか。

 

 

改質アスファルトシートが出てくる前から使用される、信頼された防水
→ 「アスファルト防水の5つの利点・5つの欠点」

 

 

 

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