シンダーコンクリートの防水改修はどうするの?
防水層を保護する「シンダーコンクリート(押えコンクリート)」の不具合の過程を、前の記事で考えました。
前の記事→
「シンダーコンクリート、5つの主な不具合とは?」
ここでは、そのような不具合・劣化を起こしたシンダーコンクリートを、どのようにして改修するかを考えていきます。
シンダーコンクリートが下地の場合の改修工法を大雑把に分けると、
①伸縮目地撤去・埋め戻し(目地処理)
②下地補修
③下地調整
④新規防水(脱気工法) です。
<①伸縮目地撤去・埋め戻し>
コンクリートの伸縮から全体を守る伸縮目地ですが、紫外線による劣化などで、すでにコンクリートの表面に飛び出ているものもあると思います。
この部分だけを撤去すれば表面が平らになって、新しい防水が出来そうですが、新しい防水層を施工した後に、残っている伸縮目地が反り上がってきたらどうなるでしょうか。
アスファルトが主成分のエラスタイトは、残しておけばコンクリートに押されて他の場所で盛り上がってくる可能性がありますし、近年使われている形成目地の場合は硬いプラスチックが防水層を突き破ってしまうこともありますので、もったいないですが全て撤去します。
目地を撤去した後は、樹脂モルタルやシーリング材などで埋め戻します。
防水メーカーによっては、目地を材料で埋めてしまわないで、特殊加工したステンレスの板を上部に接着させて目地部を平坦にする工法もあります。
シンダーコンクリート内にある残存水分を逃がす為に「脱気筒」を設置しますが、目地埋めの際は、脱気筒を設置するところ(目地が十字に交わるところ)を埋めてしまわないようにします。
脱気筒の設置箇所は、60~100㎡に1箇所程度ですが、メーカーによって見解が異なりますので確認して頂きたいです。
脱気筒の設置方法も防水材料によって異なってきますので、きちんとした脱気を行うために、正しい施工が求められます。
<②下地補修>
コンクリートにひび割れ、欠損などを確認したら、下地調整を行う前に全て補修し、平滑にします。
内部の骨組みとして6㎜くらいの太さのワイヤメッシュが入っていますが、腐食膨張して爆裂・露筋のような状態になることがあります。
壁面と同様に、樹脂モルタルにて補修します。
コンクリートの上にモルタルが薄く施工されている場合もありますが、剥離などが確認できれば、樹脂モルタルを使用して補修にします。
<③下地調整>
年数を重ねると、シンダーコンクリート表面は紫外線や風雨にさらされ「がざがざ」になります。
このままだと新規に防水材を施工しても後々引っ付きが悪くなり、剥離してしまう可能性があるので、樹脂モルタルにより滑らかにします。
少し厚みのあるボードを、シンダーコンクリート上に敷き詰めることで、下地調整を省くこともあります。
ボード自体もコンクリートに密着させるのではなく、接着剤であるセメントによって「点付け」をします。これによりシンダーコンクリートとボードとの間に通気層が生まれます。
<④新規防水(脱気工法)>
シンダーコンクリートは、年数を経て内部や下部に水を含みます。よって新しく設置する防水層を完全に密着させてしまいますと、水分の逃げ道がなくなって、蒸気が防水層を膨らませてしまいます。
それを防ぐために、新規の防水層はコンクリートに密着させずに、空気や蒸気が通る隙間を作ってフクレを防止する工法を採用します。
これらの工法を、下地と密着させず、通気する層を設けることから 「脱気工法」または「通気緩衝工法」と呼びます。
これらの工法は、アスファルト防水熱工法、改質アスファルトシート防水、ウレタンなどの各種塗膜防水、ゴムシート・塩ビシートなどの合成高分子系シート防水など、あらゆる種類の防水で採用しています。
経年後のシンダーコンクリートの最大の特徴は、内部に水が入っているということです。
このことを第一に考えて、仕様選定していきましょう。
シート防水での改修方法はこちら。
下地をきっちりきれいにしなくてもいいって本当?
→ 「シート防水の絶縁工法を知りたい」
ウレタン塗膜防水もできますが、
これをやったら大変なことになる!?
→ 「防水施工の不具合(シンダーコンクリートの上にウレタン塗膜防水)」
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