大規模修繕工事を成功させる「機械的固定工法の短所と課題」

機械的固定工法の短所・課題

機械的固定工法の短所・課題

 

 「シート防水の絶縁工法を知りたい」の記事内で、機械的固定工法とはどんなものかを記しました。その上で前の記事「機械的固定工法のメリット」では、「こんなに優れているのですよ」という話をしました。

 

ここではそんな機械的固定工法の、知っておきたい「注意点や課題」を一緒に考えていきます。

 

 

機械的固定工法の、主な注意点・課題とは、

 

  ①アンカーの固定強度を知る必要がある

 

  ②下地コンクリート内の配管状況に注意が必要

 

  ③施工後の漏水原因箇所の確認が難しい

 

  ④歩行時に注意が必要である        などです。

 

 

<①アンカーの固定強度を知る必要がある>

 

コンクリートにアンカービスを打ち込む場合、強度試験を行う必要があります。

 

これは実際に施工が可能か、またコンクリートプラグとビスの長さをどれだけにすればいいかを決めるためです。

 

ビスの長さをどうするか、ディスクとディスクの間隔をどうするかは、引き抜き試験だけでなく、どういう場所に立っているか、何階建ての建物の屋上かなども参考にして決めます。

 

風が強い場所では、ディスクとシートが強固に溶着されていても、アンカービスが短かったり、ディスクとディスクの間隔が広かったりすると、ビスが抜けたり強風にあおられてシートとディスクが剥離するなどの被害が出てしまいます。

 

また、シンダーコンクリートの上にアンカービスを打ち込む際も注意が必要です。

 

シンダーコンクリートには、通常3m毎に伸縮目地が設置されています。

 

この伸縮目地部やその付近にアンカービスを設置しても強度はないので、削孔時にこの目地の場所を確認し、強度が働く場所にアンカービスとディスクを設置するようにします。

 

 

<②下地コンクリート内の配管状況に注意が必要>

 

アンカービスを打ち込む箇所に、まれに電線専用の配管が通っている場合があります。

 

間違ってその配管の中の電線に傷をつけてしまうと、全戸のインターホンとエントランスオートロックに支障をきたしたり、場合によっては火災報知器などの配線を傷つけ、全治までの間、建物を危険にさらすという危険な事態になりかねません。

 

配管の種類は、鉄製もあれば樹脂製もあります。

 

 

アンカーのために削孔している時、鉄製の管の場合は分かりやすいので気付きますが、樹脂製の場合は気付かずに、配管をドリルが突き抜けてしまいます。

 

図面通りに施工されていない可能性はありますが、竣工図面を確認する価値はあります。

 

 

<③施工後の漏水原因箇所の確認が難しい>

 

密着工法ですと、もし漏水事故が発生した場合、その上部近辺の不具合を確認すれば解決する可能性が高いのですが、絶縁工法、しかも床部のシートが完全に下地と離れている機械的固定工法ですと、漏水の上部付近を探しても原因箇所が見付けにくい場合が多いです。

 

本来、溶着剤や熱溶着で強固に着けるので、漏水の可能性は低いのですが、やはり人がする仕事、施工上の不具合がでることもあります。

 

また、防水施工上の不具合ではなく、下地の突起物などにより防水層が傷ついている可能性もあります。

 

いずれにしても、チェック棒などの塩ビシートの口開きをチェックする道具などを使用し、口開き箇所を確認するか、表面に傷がないか、また立上り部にも不具合がないか入念に確認します。

 

 

<④歩行時に注意が必要である>

 

屋上へメンテナンスのために上がる人(高架水槽やエレベーター機械室に上る設備業者)は、そこに施工されている防水が何かとまでは考えていません。

 

機械的固定工法を理解している人は、表面を見ればディスクを確認する事ができますが、それ以外の方は関係なしに防水層の上を歩きます。

 

基本的に非歩行ですが、メンテナンス業務では非歩行の防水層の上も歩きます。しかし、硬い靴でディスクの上を踏むと、防水シートが傷つくことがあります。

 

全ての人に口頭で注意喚起することは難しいので、注意書きを用意する、メンテナンスでの通路のみディスクの位置をマーキングする、防水シート保護の対策を施すなどの処置が必要です。

 

 

4つの注意点の他にも、施工にあたって、誘導加熱装置の不具合や施工ミスなどで、鋼製ディスクとシートが適切に溶着されなかったり、加熱し過ぎてシートを溶かしてしまい、補修のパッチ当てをしなければならなくなるなどの不具合もあります。事前の機材チェック、施工に対しての知識の徹底も図りたいです。

 

 

 

近年、改修工事の際、廃棄物処理や工事中の漏水の問題などにより、既存の防水層を撤去せずに新しい防水層を設置する工法が沢山出ています。

 

その中でも、機械的固定工法は下地の状況に左右されにくいなど、多くの長所を有した工法です。

 

しかし同時に気を付けなければならない点も多くあります。

 

それらの点をしっかりクリアすれば、非常に頼もしい防水工法であることは間違いありません。

 

しっかり理解し、貴マンションでも検討してみてはいかがでしょうか。

 

 

改修方法に困っている防水層にも対応します
→ 「機械的固定工法のメリット」

 

機械的固定工法ってどんな工事?
→ 「シート防水の絶縁工法を知りたい」
 

 

 

 

 

機械的固定工法の短所・課題 関連ページ

屋上の「謎の植物」(雑草への対応)
シンダーコンクリート(押さえコン)、5つの主な不具合とは?
シンダーコンクリートの防水改修はどうするの?
絶縁工法とはどんなもの?
主な防水の絶縁工法は?
シート防水の絶縁工法を知りたい
機械的固定工法のメリット
「ウレタン塗膜防水」とはどんな工法?
ウレタン塗膜防水の欠点・デメリット
ゴムシート防水の長所・利点とは?
ゴムシート防水の欠点・デメリット
アスファルト防水の5つの利点・5つの欠点
改質アスファルトシート防水 3つの主な工法
防水施工の不具合(シンダーコンクリートの上にウレタン塗膜防水)
防水施工の不具合(アスファルト防水の上に塗膜防水)
防水施工の不具合(ゴムシート防水の上にウレタン塗膜防水)
水が入らない端末納まりとは(水切りの不足)
水が入らない端末納まりとは(立上りが低いときの対策)
水が入らない端末納まりとは(いろんな不具合と改修方法)
足場があるうちしかできない防水工事
斜面は壁?屋根?
仮防水 しないとどうなる?
仮防水 どんな種類がある(1)?
下地が悪い場合の防水改修、どうする?
屋上に水たまり。なぜ?
屋上の水たまり、どうやって直す?
え? ホントに押さえコンクリート斫るんですか?

ホーム RSS購読 サイトマップ
HOME