え? ホントに押さえコンクリート斫るんですか?
屋上の防水層を保護する軽量コンクリートを「押さえコンクリート」又は「シンダーコンクリート」と呼びます。
この押さえコンクリートも劣化をしていくという事を、
「シンダーコンクリート、5つの主な不具合とは?」 で伝えました。
ではどのようにして改修するかを、
「シンダーコンクリートの防水改修はどうするの?」 でお話ししました。
過去の記事を読んで頂けたあなたなら、「よほどの事がない限りは押さえコンクリートを斫る(撤去する)なんてことはしないんだな」 という認識をしていただいていると思います。
しかし、 そうではない人も、 なかにはいます。
いや、おそらくその人はこの記事を読んではいないと思いますので。
なぜって、その方(以下Sさん)はマンションの仕事とは全く無縁の元請け担当者で、その建物はマンションなどの集合住宅ではなく、とある施設であります。
Sさんにもこのサイトを教えてあげたいのですが、こんなサイトを私が立ち上げている事は内緒でして。
私はそこへ他の工事ではいっており、防水工事は別の業者さん(担当はTさん)が入られていました。
Sさん「全部斫るよ」
Tさん「うそでしょ」
Sさんは至って真面目に言いました。
「だってこのコンクリートの下って防水層ないんだもん。作らないと」。
なんでもこの建物はS造(鉄骨造)で、屋上は人が常に歩くので、通常の仕様としてはデッキプレートの上にコンクリートを打設し、防水施工し、保護モルタルを打つという流れです。
しかしこの屋上は、鉄骨梁の上に鉄板を張り、その上にコンクリートを打ち、防水施工しているとのことです。
しかも竣工からかなりの年数が経っており、防水層もほぼ役目を終えています。
ん? 「このコンクリートの下って防水層ない」?
よく考えるとここに打たれているのは、押さえコンクリートではなく、ただのコンクリートでした。
ということは、これを斫れば鉄板が出てくるということか。
漏水が激しいとは聞いていましたが、そりゃそうですよね。
訳あって写真は載せられませんが、最上階の天井部は確かに鉄板が合わさっているのが見えます。大抵、鉄板の端部は梁の上に乗っていないと危険なのですが、場所によっては鉄板同士の合わせ面が見える状態です。
コンクリートを斫った所を見せてもらうと、本当に鉄板が出てきました。
しかも鉄板の端部と端部が合わさっている箇所は何も処理されていません。
<写真>
実際にコンクリートを斫ったところ。
鉄板が出てきて合わさった箇所は隙間がある。
Tさん「いやいや!これ斫っちゃだめでしょ! 雨降ったら大変ですよ」
Sさん「斫って直ぐシーリング材打てばどうにかなるでしょう。根本からやらないと」
Sさんの押しに勝てず、全面斫り+防水仕上げ+コンクリート打設という施工が決まりました。
しかも漏水をさせてはダメって、無理でしょ。
いざ工事が始まってしまうと、かなりの量のコンクリート斫りガラ、さらにすごい量のほこりが施工中は舞い上がっていました。
「やりたくなかったけどね」 施工中もTさんはこぼしていました。
屋上は広いので、いっぺんに斫れる訳ではなく、ブロックごとに区切って斫り完了後清掃してコーキング処理を行っていました。
しかしたくさんの作業員が行きかう現場では、全員がそのコーキング材に注意を向けているわけではありません。
朝礼では、留意点として床のコーキング材の事は挙がっていますが、やはり踏んでちぎれる箇所がちらほら。
それを全て補修しきれずに雨の日を迎えて漏水・・・
コーキング箇所のみでなく、立ち上がりとの取り合いからの浸水も見られました。
<写真>
コンクリート斫り後の立上り付近状況。
架台の下部は腐食が進んでおり、補修後に埋め戻す必要がある。
立上り下部もコーキング処理はしていたが、浸水は防げなかった。
なるべくしてなった漏水事故。コンクリート斫りと並行して漏水している箇所の処置にも追われました。
産業廃棄物をたくさん出すし、施工中はほこりが舞って周辺にも迷惑をかけて他の工事にも支障をきたす、客先からは「なにしてんだよ」と思われ、やっている方もしたくもない漏水処理などで無駄な動きをして疲れます。
なにがいいたいかって、
「余程のことがない限り、押さえコンクリートにせよただのコンクリートにせよ、防水改修する際は斫らないでください!」
ということです。
昔の建物は同様な造りをしているものも多いようです。
根本から直したいと思う気持ちも分かりますが、スマートに進められ、みんなが疲れずに済む方法があれば、それでいいではありませんか。
押さえコンクリートにせよただのコンクリートにせよ、斫らないで防水改修したい!!
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