屋上に水たまり。なぜ?
なんで屋上に水たまりが・・・?
建物の防水とは、躯体の中に水が浸入することを防ぐことにより、安心して居住することと、躯体の延命を目的とします。
しっかりした防水層があることで、雨が降っても建物は守られます。
さて、防水層の表面で遮られた雨水は一体どこに行くのか。
三角屋根などの傾斜した屋根では、斜面を流れて屋根の下端まで行き、「横樋」と呼ばれる樋に流れ込みます。流しそうめんの竹みたいな、アレです。
傾斜屋根の場合はもう一つ、屋根の下端付近に溝が作られていることもあり、そこへ流れ込ませる形状もあります。
どちらにせよ、傾斜がキツイ屋根では、雨水はほとんど流れていきます。
これが屋上などの「陸屋根」になったらどうでしょう。
傾斜屋根のように目に見えて雨水がどこかに流れていくことはありません。
しかし、陸屋根にもパッと見ではわからないくらいの「勾配」があります。
その勾配にしたがって流れ、排水ドレインといわれる「穴」に行き着きます。
この勾配、ほんとに微々たるもので、1/100(1mで1㎝)や、1/50(50㎝で1㎝)であったりします。
新築工事の時に、この勾配を考慮して屋上躯体を施工します。
ここで適切な勾配調整を怠ることが、屋上の水たまりを発生させる要因の「ひとつ」です。
勾配調整を怠るってどういうことでしょうか。もちろん、怠りたくてそうしてしまう訳ではありません。
例えばコンクリートの打設後に行う均し(ならし)で、真っ直ぐな勾配にならず、コンクリートに凹凸をつけてしまう。又、屋上の形状が真四角やまん丸ならば簡単なのですが、L型やコの字、その他の複雑な形状であったり、途中にはと小屋などの架台が複数あること などなど。
設計段階、または施工段階の様々な不手際や目測の誤りで、勾配調整の不具合がでてしまいます。
これを防ぐには、設計段階で屋上の形状を考慮した勾配を計算し、しっかりした施工をするしかありません。
<図>
水勾配の大きさによる雨水の流れの比較
下地に同じ凹みがあっても、勾配の大きさにより水たまりができる場合とできない場合がある。
・・・要因の「ひとつ」、ということは他に要因があるのかですが、あります。
まず、設定された勾配自体が「小さい」ことで、雨水が流れなくなります。
「少しでも勾配があれば、水は流れていくでしょ、重力もあるし」。 ごもっともです。
この時の水が流れなくなる要因、それは、「防水シート」です。
建物を守るための防水シートが、水の流れを悪くする。これはどういうことかといいますと、シート防水は巾1メートル程度の防水シートを、少しずつラップ(重ねること)させながら施工します。
このラップ部が微妙に盛り上がってしまうので、勾配が小さいと水の流れは止まってしまいます。
そういった理由で、できれば新築時の勾配調整は、1/100程度ではなく、1/50以上あってくれるとありがたいです。
もう一つの水たまりの要因は、「排水ドレイン」です。
「防水シートに続き、ドレインまでもか! そこまで行ったら後は流れ込むだけだろ」。 ごもっともです。
しかし排水ドレインに流れ込む手前で、プールみたいになっていることがあります。
これの原因は、排水ドレインの手前が勾配がなく平坦になっていること、且つ排水ドレイン自体が段差を作っていることです。
たった5㎜弱の段差でも、手前が平坦ならば水が溜まってしまいます。
「いいじゃないですか。もうすぐ排水される場所に水は行ってるわけだし」。 よくありません。
直ぐに蒸発してしまうわけではないので、防水層は長く水たまり状態が続きます。
これは防水層を早く劣化させる要因となります。さらにシート防水ならば、シート間のラップ部が劣化し、そこから浸水する事態に発展することもあります。
「屋上の水たまり」の要因。色々考えられますが、詰まる所、「設計・施工時の目測の誤りやミス」に行き着きます。
なにを言っても起こってしまっている以上、防水改修工事でなんとかしなければなりません。
「屋上の水たまり、どうやって直す?」 という記事で考えていきます。
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