ウレタン塗膜防水の欠点・デメリット
アスファルト防水やシート防水と違い、仕上がりに継ぎ目ができない防水層を形成する塗膜防水は、狭い場所などに非常に有効な工法です。
他の工法よりも簡単に施工できる反面、施工方法を間違えると、不具合になることが多いので、施工者も居住者もしっかりチェックしたいものです。
<天気予報はしっかり確認!>
シート防水とは違い、施工後に雨に打たれるとすごい状態になるのが塗膜防水です。
FRP防水は硬化が速く、少し時間が経てば被害は少ないのですが、その他の防水、特にウレタン塗膜防水は硬化が遅く、少量の雨に打たれただけで、ひどい凸凹になります。
<写真>
ウレタン塗膜防水の防水材施工後、雨に打たれた様子。
写真の防水層は、午後からの降水確率が30%であったときの施工でした。
午後から晴れ間が見えると予想して工事にかかったのですが、余分な材料が掛かってしまいました。
天気予報には細心の注意を払い、「怪しいな」と感じたら、作業を中止する勇気を持ちましょう。
<下地処理は慎重に!>
モルタルやコンクリートのままだと分かりにくい不具合が防水工事前に見落とされる事があります。
壁面だと気付きやすいものも、床面等、視界に入りにくい箇所はどうしても見落とされがちです。
見落としたことに気付かずに塗膜防水をかけると、不思議なことに不具合がよくわかります。
それも入念に見ないと発見できないことがありますので、やはりしっかりした事前調査が不可欠です。
下地が健全でないと思われる場合、または旧防水層を撤去した後に施工する場合などは、ポリマーセメントモルタルなどでの下地調整を行う事をお勧めします。
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施工前の調査とプライマー塗布などがしっかり出来ていなかったため、ウレタン塗膜防水施工後に不具合が生じた。
<写真>
立上りコンクリートのピンホールなどの劣化に気付かず、ウレタン塗膜防水を施工した様子。樹脂モルタルなどで下地調整をしっかり行えば防ぐ事が出来たと思われる。しかし、トップコートを塗布する前に気付いてもいいものだが・・・
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新規にウレタン塗膜防水を施工するコンクリート(側面)、モルタル(天端)。ひび割れやピンホールを見落とすと、仕上がり後に出てくる。ポリマーセメントモルタルなどを使用しての下地調整が望まれる。
<防水厚さを均一にする>
シート防水ではないので、完璧に塗膜防水の厚みを均一にすることは難しいですが、ある程度は可能です。
しかし、あまりにも厚みが違いすぎると、施工後の材料伸縮巾(温度によって伸びたり縮んだりする程度)も違いすぎて、破断してしまうこともあります。
可能な限りでいいので、塗膜防水層の厚みは均一になるようにします。
<写真>
ウレタン塗膜防水層の破断。立上りと平場の防水材厚さに違いがあるため、伸縮巾の違いで破断したものと思われる。
<施工前の清掃を確実に!>
面倒くさいのか、塗膜防水層(特に改修)を見ると、髪の毛やビスなどを一緒に塗り込んでいる場合があります。
決してこれらを混入すると防水性が増す事はありません。
逆にそこから劣化が促進され、破断や減耗などを誘発する可能性があります。
意匠性(見た目)もよろしくなく、居住者のことを考えていない施工とも受け取れます。
竣工後にずっと住んでいく居住者の方々の身になって、きれいな仕上がりを目指したいものです。
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ウレタン塗膜防水施工時に、十分な清掃を行わなかった、もしくは刷毛塗りの際に抜けた毛をそのまま塗り込んだものと思われる。いずれにしても、これからずっと住まれていく居住者の気持ちを考えられれば起こらないものである。
<トップコートも確実に>
ウレタン塗膜防水の基本材料は、下地との接着を確実にする「プライマー」と、防水の役割を果たす「防水材」、保護層を形成する「トップコート(保護材)」の3つからなります。
トップコートはもちろん、紫外線や外気から下の防水層を保護するために塗布するものです。
このトップコートが、時間の経過、もしくは塗布時の不具合(2液の場合に主剤と硬化剤の分量を目検討で量るなど)で、劣化していくと、保護をなくした防水材は劣化が早く進みます。
メーカーも「○○年に一度はトップコートの塗替えをお願いします」と注意書きに書いているくらい、トップコートを塗り替えることは重要ですので、少しでも耐用年数を伸ばすために、トップコートを確実に塗布する事が望まれます。
<2液の材料は分量をしっかり守る!>
1液の材料を出してきているメーカーもありますが、今のところは防水材もトップコートも2液が主流です。
2液の分量は、防水性能をしっかり発揮し、長期間その性能を維持するためにメーカーが設定しているものですので、遵守することは工事会社として当然の責務です。
しかし改修前の防水層を見てみると、明らかに分量をいい加減に量って施工したのかと思われる事例が見受けられます。
倉庫の在庫にどちらかだけが余っているなんてことはないでしょうか。
施工者は、「工事をしたらそこで終わり」という発想を頭から消し去りましょう。
「建物と住んでいる人を守る」という基本を念頭に置いて工事に向き合いましょう。
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トップコートがなくなり、防水層の劣化が進行している様子。メッシュシートも同様に劣化が進んでいる。
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バルコニー床面に施工された塗膜防水。トップコートが粉状になっている。防水補修する前に、弱い部分を全てケレンする必要がある。
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屋上の一部に塗膜防水が施工されていたらしいが、見る影もない。新築から十数年しか経っていない物件で、いくらトップコートの塗替えが行われていないとはいえ、ここまでなるだろうか。
<場所に合わせた防水材を>
ウレタン塗膜防水の防水材は、流動性に富んだ床面用と、粘性が強い立上り用があります。
メーカーによって、立上がりや斜面専用があったり、床面用に用途に応じて増粘剤を加えるなど様々です。
ウレタン防水の場合、立上り面の施工を疎かにすると、非常に残念な仕上がりになります。
<写真>
パラペットへの塗膜防水密着工法(メッシュシート仕様)。増粘剤を加えた立上り用になっているようだが、狭小部のためか、塗布量が不足してメッシュシートがあらわになっている。
<写真>
立上り部分への塗膜防水メッシュシート仕様。上の写真同様、増粘剤を加えた立上り用になっているようだが、塗布量が不足して全体的にメッシュシートの形がわかり、メッシュシートがあらわになっている所もある。
防水材がダレていくことを想定し、しっかり塗り込んでいけば大丈夫です。
塗布回数も2回で塗布できないとすれば回数を増やして全体の塗布量を確保するようにしたいです。
いくつか注意したい事を記しましたが、気を付けたい点をしっかり気を付ければ、非常に有効な防水工法です。
施工する方も、チェックする方も、基本を踏まえて建物全体をしっかりとした仕上げで守っていきましょう。
こういう施工にも気を付けましょう
→ 「シンダーコンクリートの上にウレタン塗膜防水(密着工法)」
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