長尺シートの防水保証について考える

長尺シートって防水保証でるの?

長尺シートって防水保証でるの?

 

共用部の床面工事を行ったのに「防水保証」が出にくい理由、ご存知ですか——?

 

 

 

大規模修繕工事では一般的に、バルコニーベランダ、及び共用廊下の床面改修工事も行われます。

 

その際、多く採用されているものの一つに、防滑性ビニル床シート(以下、通称の長尺シートと記します)があります。

 

長尺シートが広く用いられる理由の一つに、高い「意匠性」があります。

 

新築時のモルタル表面が、経年劣化してみせる寒々とした見た目とは比較にならないくらい、そして同様に改修工事でよく施工されるウレタン塗膜防水ポリマーセメント系塗膜防水などの塗膜防水などと比較しても、見た目は非常にきれいです。

 

デザインも、メーカー各社バラエティに富んでおり、比較的安価なスタンダード商品、少し高価なハイグレード商品などを取り揃え、個々のマンションに合った色・柄を選択することができます。

 

性能面でいえば、工場で均一に製造されているので高い品質が確保されています。

 

また、厚いビニル製のシートであるため、遮水性能が高く、シートの下部に水を通さないので、躯体の保護にも一役買っています。

 

その他、高い耐候性(雨水はもちろん、紫外線にも強い耐候性能を有する)、防滑性(表面にある様々な形状が滑り止めになっている)、遮音性(靴などの音の伝達を遮断する性能に優れている)など、様々な利点を持っています。

 

 

 

 

防滑性ビニル床シート(長尺シート)の例。

<写真>
防滑性ビニル床シート(長尺シート)の例。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

防滑性ビニル床シートの例。写真は階段用シート。

<写真>
防滑性ビニル床シートの例。写真は階段用シート。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このような長尺シートがマンションの共用部分に増えてきた背景には、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(通称 品確法)」の存在があります。

 

品確法の施行により、戸建て住宅のみならず、新築の分譲マンションも良質な住宅性能が求められるようになりました。

 

そのため、共用部分の床面は、単にモルタル処理するだけでなく、その上に遮水性能を持った仕上げ材の施工が必要になったのです。

 

そこへ広く施工されたのが長尺シートであります。

 

結果、「品確法さまさま」と言う方もいますが、「近年の分譲マンションのハイグレード化により、標準装備されるようになった」と考える方が自然ではと感じます。

 

 

ところでこの長尺シート、大規模修繕工事時に「防水保証が出にくい」ことを御存じでしょうか。

 

共用廊下やベランダの床面形状は、床面があって、水が流れる溝があって、両端に100mm~150mm程度の垂直に立ち上がった面(主に玄関側は巾木と呼びます)があります。

 

長尺シートを貼る面は「床面」で、溝と巾木は何もしないか、多くは塗膜防水を施工します。

 

溝・巾木に何もしない場合は、そこから水が浸透するので、全体的に防水保証が出せない理屈は分かりやすいです。

 

しかし塗膜防水をしていて水を通さないはずなのに保証が出ないのはおかしいのでは——?

 

これは「材料メーカーの一貫性のなさ」が大きな理由です。

 

従来、防滑性ビニル床シートのメーカーは、主に内装などの床材を手掛けているところが多く、塗膜防水のメーカーは、もちろん防水材メーカーになります。

 

よって「片方が自分の会社の製品ではないので防水保証は出せません」、という事です。

 

防水保証を出すとすれば、施工会社が自社保証として出すしかありません。

 

「材料メーカー連名保証ってホントに必要?」で触れましたが、やはりメーカー保証が付かなければならない場面も出てきます。

 

設計監理者管理組合も、理解がある場合はいいのですが、そうでない場合は・・。

 

つくづく「メーカー同士が提携すればいいのに」と思ってしまいます。

 

そんな中、とある防水メーカーが、防滑性ビニル床シートを世に出し、世間で信頼を勝ち取っているウレタン塗膜防水との併用で防水システムをうたうようになりました。

 

これは画期的なことであり、当然防水保証も普通に出るようです(別にメーカーの回し者ではありませんので、あしからず)。

 

信頼されるメーカーであり品質が良いので、若干値段がネックではありますが、安心・ブランドを買うという意義があるのではないでしょうか。

 

 

防水保証が出せない理由として、以前床材メーカーの方から聞いた話は、「屋上防水シートと違い、長尺シートはシート同士をラップさせないので止水性は弱い」というものでした。

 

この話の通り、屋上などに使用するシート防水は、70㎜~100㎜程度シート同士をラップ(重ね合わせる)することで、防水性を強めています。

 

これには「なるほどな」とうなづきました。

 

しかし、現に前述の防水メーカーは、そんなラップなしで防水保証を出しております。

 

シート同士の継ぎ目も遮水性のある溶接棒(熱してシート間の溝を埋めるもの)で溶着させるので、問題ないと思います。

 

 

企業様も、思考と努力を重ね、施工会社や管理組合がもっと喜ぶよう、顧客へのさらなるアプローチを試みてはいかがでしょうか。

 

 

 

なぜ大規模修繕工事の際にバルコニー床面工事をするべきなのか・・・?
→「大規模修繕時にバルコニー床面工事をする3つの理由」

 

 

 


ホーム RSS購読 サイトマップ
HOME