お宅はどこの業者ですか? 無名業者が工事を受注するカラクリとは?

どうして御社が大規模修繕を?(ななしのごん社さん)

どうして御社が大規模修繕を?(ななしのごん社さん)

 

皆さんの住んでいる地域は、改修工事の施工業者はどれくらい存在するでしょうか。

 

沢山いる地域もあるでしょうし、入札に参加するメンツが100%同じという場所もあるでしょう。

 

入札や現場説明会の度に、他の業者の方々と色々お話をし、情報交換も行うと思います。

 

そこのマンションは○○工業が受注しただの、あそこのマンションでも近々改修工事の話が出るらしいだの、●×建設は△△マンションの工事を失敗し、足が出た(赤字だった)らしい などなど。

 

そうやって切磋琢磨し、技術面、コスト面共向上していくものです。

 

マンションの大規模修繕、その他の工事に参加する際、不安でもあり、楽しみでもあるのが、他にどの業者が参加しているかです。

 

「○○工業はプレゼン力があるからな」とか、「$$産業は安いからな」とかの話題が社内で出てきます。

 

そして、どうやってそれらの会社を出し抜いて受注に結び付けるかを考えるのも、やりがいの一つでもあります。

 

 

そんな中、工事の見積に参加すると、見たこともない会社が参加していることがあります。

 

「知ってる?」 「知らない」 既知の業者間でこんなやり取りが飛び交います。

 

そして続けます。 「あっちが取る(受注する)かもね」 と。

 

一体なぜか。

 

居住者の息がかかっている業者である確率が、非常に高いからです。

 

それは、大規模修繕よりも、防水工事や設備工事などの、比較的小工事の場合が多いです。

 

名前を知らないのは、普段は他の業者から仕事を受けてやっているので、名前が表に出ないからです。

 

そして、小工事でこのような業者が参加してくるのは、建設業の許可を持っていなくても出来るからです。

 

建築一式工事以外は、500万円未満であれば、建設業許可を持っていなくても受注出来ます。

 

そういう金額の工事でも、その業者はどうしても取りたい。

 

下請けで工事をすると、利益が少ないですが、直接管理組合から請けると、いつも以上に利益が出るからです。

 

そして、まれにそれに協力する人間が、居住者にいます。

 

仕事上でのつながりであったり、昔からの馴染みであったりします。

 

悪いことに、そのような居住者は、我が強く、他の居住者に有無を言わせぬ人間だったりします。

 

 

我々工事業者も、居住者の紹介で参加することはよくあります。

 

それは、他のマンションにお住いの知人から、いい業者であるという評判を聞いたり、管理会社から評判を聞いたり、あるいはそのマンションで以前施工した他の工事が良かった場合などです。

 

そうではない人が連れてきた、馴染みの業者などが入った場合、現場説明から見積、プレゼンまでの流れは、どのようになるでしょう。

 

 

私が経験した一例を挙げます。

 

 

ある業者が、ごり押し気味の居住者の推薦で、屋上防水工事の見積に参加します。

 

先ず、いくらが管理組合が出せる金額かが分かります。

 

よってそれ以上の金額で出すことはありません。

 

そして、どんな工事をすれば金額が下がるかを考えます。

 

ここであまり改修工事の方法を知らない業者は、下地状況などを考慮せずに計画します。

 

下請けで工事を請けることが多いので、普段から自分で工法を考えることがないのです。

 

そうして作った見積金額に、紹介者である居住者に渡す「紹介料」も計上します。

 

もちろん、間違っても「紹介料」なんて項目は書きません。

 

 

業者からの見積書、施工計画書などが一通り揃ったところで、その業者の見積金額が安く、どこの業者も選定していない工法を採用したりするのです。

 

とにかく安いので、プレゼンテーションには残ります。

 

そしてプレゼン当日、テレビショッピングのような展開が繰り広げられます。

 

終始、名無しの会社を推したい居住者の独壇場になります。

 

その日は、プレゼンに参加する業者全てが、最初から最後まで出席しました。

 

説明する業者に対し、「ここの見積項目の金額は高い」であるとか、「建物名は出さないけど、お宅が工事したマンションからの文句を聞いたことがある」など、我々業者を下げるための、名誉棄損に近い発言を連発します。

 

その後、自分が推す会社の説明が行われると、「おたくも他と一緒なんじゃないの?」などと白々しい言葉を投げます。

 

返答する言葉が終わるころには、「おたくは違うねー」などと言い、いい業者であるということを、他の居住者に植えつけます。

 

同じような答弁が進んでいき、件の居住者から、「ところで工法しか書いていないけど、どこのメーカーの材料を使用するの?」

 

それに対し業者の口から、我々が耳慣れない会社の名前が出てくると、「あー、そこの材料を使うの。なんの問題もないね。」などと言うのです。

 

「え――――――っ! 知らないよそんなメーカー。」 などと叫ぶ訳にも行かず…。

 

締めはその業者の一言、「私は人に任せるのが嫌いな質です。施工も社長である私が直接行います。ご安心ください!」

 

「すばらしい!!」 と紹介者。

 

その他の業者は皆、時間を無駄にしただけです。

 

帰ってから、その業者と材料メーカーに関してネットで検索しました。

 

業者名は、他の都道府県の同名別会社が出て、材料メーカーの方は、ホームページの出来で会社を判断するのは偏見もありますが、お世辞にもきちんとした感じには見えませんでした。

 

 

それから1年後、理事に連れられて上った屋上を見て…そら見たことか、と思わず口から出るのを抑えました。

 

「若しおたくならば、この状態から良くしようとするにはどうされますか?」と聞かれ、正直に答えると、「とてもそんなお金は…」と言われました。

 

きちんと保証がなされたらいいのですが。

 

 

 

笑ってしまうような話ですが、こんな話が実際にいくらでもあるのです。

 

管理組合の皆様、実績のある業者は、それなりにその地域で名前が知れています。

 

ご自身で調べることによって、一部の人の意見に惑わされず、本当にマンションのことを思ういい業者に巡り合えることを祈ります。

 

 

 

 

 


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