大規模修繕工事を成功させる「自社都合・利益最優先の会社について」

もしも会社の都合を最優先で工事をする会社があったなら・・・

もしも会社の都合を最優先で工事をする会社があったなら・・・

 

もしも現場に関わる全ての人が、工事が進むにつれてすさんでいったならば・・・

 

 

大規模修繕の現場では、原則的に現場代理人が常駐します。

 

営業が工事を受注し、現場代理人へ引き継ぎます。

 

そして現場代理人は、 「会社の代表の代理」 として現場の任務に就きます。

 

 

現場代理人は、居住者が如何に工事期間中も安心して過ごせるか、作業者が如何にやり甲斐を持って工事に挑めるか、如何に工事が終わった後、「おたくに頼んで本当に良かった」 と言ってもらえるか、ということを考えながらひとつひとつの現場を収めていきます。

 

原価管理も大事でしょうし、工期をまもることも大事です。

 

しかしそれより大事なものは、仕上がりに満足してもらう事と、安全に工事を進めることです。

 

 

 

ここに一件のマンションを受注した施工会社があります。

 

あと4ヶ月で決算を迎えるこの会社は、平年よりも完成工事高が伸び悩んでおり、上の方々はなんとしてでもこの工事の完了を決算に間に合わせたいと意気込んでおります。

 

しかし、きちんとした検査を重ねて良い工事をしようとすれば、6ヶ月は掛かる工事で、今から施工体制を整え、工事の準備を含めたら、完工後書類提出までに5ヶ月半掛かると現場代理人は判断しました。

 

しかも監理者として設計事務所が入っており、そちらの都合も考えなくてはなりません。

 

そんなことはお構いなしに、上の方の、「あと4か月で終わらせろ!」 の一点張りが続きます。

 

仕方なく監理者にそれを告げると、「そういう事情があるなら仕方ないですが、大原則としてきちんとした施工管理を行う事、手抜きのないこと、居住者の方々が不安になる様な事がないようにして下さい。」 と言って下さり、着工日の前倒しと工期の短縮案に同意しました。

 

 

そして駆け足で準備が行われ、着工日を迎えました。

 

足場部材を荷揚げするクレーン車が現場に到着しましたが、駐車区画の1台の車がクレーン車を設置する場所に駐車したままなので、急いで車の持ち主の部屋へ行きます。

 

しかし留守・・・ 仕方ないので本来移動する必要のない方の車を移動して頂き、クレーン車と足場部材の運搬車を設置して作業に掛かりました。

 

3日程同様の事を繰り返し、その後車の持ち主と連絡をとる事ができ、移動して頂きました。

 

後日、その方と話をした結果、エントランスの郵便ポストはしばらく開けていないことが判明しました。

 

着工までの準備期間が長ければ、もう少し別の対処が出来たかも知れません。

 

 

無事足場が架かる頃には、例年にない降雨の日が続き、現場をやきもきさせ、さらに劣化調査の結果、予想以上に劣化が進行していることが判明しました。

 

通常ならば、劣化の増加分の精算と工期延長のための打ち合わせを行うのですが、ここで「工事は予定通りの日程で終わらせます」と言及します。

 

管理組合からは、「早く工事を進める分はいいが、大丈夫か?」との声が挙がりますが、大丈夫としか言えません。

 

全ての業種を増員して乗り切ると決めました。

 

しかし間が悪いことに、繁忙期に重なっていて思う様に作業員の確保が進みません。

 

仕方なく、普段は取引のない会社と取り決めを行い、現場に入ってもらう事になります。

 

 

いざ仕事を頼んでみたものの、元からいた作業員との連携が悪い、なれない材料に四苦八苦する、代理人のいう通りに作業を進めない等々で、思う様に進みません。

 

監理者も、検査や点検の度に、「この仕上がりは大丈夫か?」 と思う箇所がいくつかありましたが、「性能上は問題ありません。直している時間がないので先に進めます。」と言われ、黙認します。 が、この会社に対する不信は募っていきます。

 

工期も中間点を折り返した頃、最新の工程表をみて、各業種の責任者は固まります。

 

「普通じゃないなこれは・・・」

 

足場解体前の検査と居住者アンケートで、指摘箇所が沢山出ましたが、「バルコニー内の不具合箇所は、居住者様の専有部を通して頂き、直していきます。」と掲示をし、早々と足場を解体します。

 

工事を早めに終えるために。

 

そうして竣工の日を迎えました。

 

足場を固定していた壁面のアンカー後を埋め戻していない、軒天専用の塗装の色が壁面に飛んでいる、等 数か所の不具合が見つかり、後日、それを高所作業車ゴンドラ足場補修しました。

 

しかし、現場代理人も監理者も、本当の作業の内容、そしてどうして工期延長のお願いをしなかったかは、口が裂けても言えません。

 

そして数年後、「会社の基本方針」 は、定期点検時の不具合となり現れるでしょう。

 

 

 

これは、あるマンションの居住者様から聞いた話を元に、私が脚色したものですが、実際に会社の都合を優先させて工事を疎かにする業者は存在します。

 

これらの工事の関係者、話の中では現場代理人と監理者はこの後、罪の意識を背負って生きていく事になります。 

 

他に、自分の仕事にプライドを持っている、プロ意識と責任感の強い作業員達も同様の気持ちを負うでしょう。

 

こんな修繕工事は行ってはいけません。

 

工事関係者もさることながら、マンションに住んでいる方々も幸せにはなりません。

 

時間が掛かる事は仕方のないことです。

 

初めに想定した工期を無理に縮めようとすると、必ず歪みがでます。

 

結果、工事に関わるほとんどの人間が不幸になります。

 

 

施工業者の、現場に出ない上の方々は、現場に関わる人間の声を聴いてください。

 

そして自分の会社が受注した大規模修繕工事の現場には、沢山の居住者の方々が住まわれていることを今一度意識して下さい。

 

修繕積立金とは、その方々が十数年くらいかけて貯めた、大事なお金であることを意識して下さい。

 

 

現場に関わる営業の方や現場代理人の方々も、

 

「無理に工期を縮めようとすると、結果的に会社の信用を無くすことになる」

 

「マンションの方々の気持ちが入った大事なお金を粗末に出来ない」 と、

 

勇気を出して、声を大にして言って下さい。


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