結露がバルコニー防水工事を止める?
大規模修繕では、バルコニーの床面に防滑性のビニルシートを張り付ける工事が普通になってきました。
施工手順としては、
・清掃(水洗い)
・床面しび目地埋め
・ひび割れ などの補修
・溝、幅木のウレタン塗膜防水
・床面に防滑性ビニルシート張り付け
・シートの端部に専用シーリング処理
という流れで進んでいきます。
工事も終盤にかかり、いよいよバルコニーの溝・巾木のウレタン塗膜防水に掛かる日、晴天にも関わらず、「工事ができません」という事態が稀(まれ)にあります。
それは「室内からの水」が原因です。
夏場は、エアコンの室外機からの排水に悩みます。
これは注意喚起を行う、ホースを延長してバルコニー内の排水ドレインまで誘導する、などの対策があります。
こわいのが冬場。工事説明会や事前のお知らせでいくら注意喚起を行っても、お部屋を閉め切って暖房をガンガン回す方が後を絶ちません。
これでなにが起きるのかというと、バルコニーの出入口の窓に結露水がびっしりとでてくるのです。
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結露水のために溝のウレタン塗膜防水の施工が止まっている。
通常、溝・巾木の塗膜防水は溶剤系のウレタン塗膜防水を施工します。
この防水は、下地に水分を含んでいれば施工できません。
水気がある場所でも施工できる水性のエポキシ系プライマーを塗布すれば、なにもしないよりはそれからの施工が進みますが、イレギュラーな方法ということ、2液性の非常に高価な製品であることということで、そうそうできる施工ではありません。
無理矢理施工したとしても、後々になって剥離を起こすことが多いです。
よく、ハンドバーナーで炙って作業に入っていることがありますが、本当に工期的にどうしようもない場合です。
表面は乾燥していても、モルタル内に水分が残っていて、施工後に塗膜防水がふくれることもあります。
本来はそのような工事はおこなうべきではありません。
工期などの理由で、どうしてもそうしなければならない場合もあるでしょう。
しかし、絶対に無理矢理やっていることを隠して、「普通に作業できました」 なんて言わないで下さい。
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テープで止める、布を挟むなど、外で作業員ができる対策には限界がある。写真は流れ出た結露水が防水材を削っているところ。
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ウレタンが結露水から削られている場所を、シーリング材で補修した様子。確実に仕上がりが悪くなる。ウレタン防水材で補修したいが、また結露水で流される。
仕上がりで苦情を受けるのは筋違いである。
後々ふくれてきて手直しに手直しを重ねる可能性があります。仕上がりが悪い場合もあります。結露の影響で仕上がりが悪いのは、腕が悪いのではありません。誰がしてもそうなります。
「結露水の影響がありましたが、工期に間に合わせるために無理矢理施工を進めました」と、施主には絶対に伝えるべきです。それか、工期を延ばして頂いて、余計な工数が掛かってしまった場合の工賃も保証して頂き、確実に施工するべきです。
施工者の瑕疵ではないものは、頑として瑕疵ではないと伝えて下さい。
人のいい会社、営業マンになればなるほど、工事の際に何があったかを抜きにして、「ホントにすみません。手直しします。」と、何から何まで職人さんに手直しさせます。おまけに、「施工のミスだから無償でやるように」と言われた日には、真面目に仕事をしている人間はやる気が失せてしまいます。
工事の時に、何があったかは必ず記録を残して、保証の有無の資料にすることをおすすめします。
また、こうならないためにも、居住者の方々には周到に注意喚起を行い、
●暖房を使用しない、若しくは温度を下げる
●窓に付いた結露水は早急に取り除き、窓の下部にウエスや新聞紙を敷き、外へ流れ出るのを防ぐ
●換気設備(換気扇やサッシの小窓)を利用して、室内外の温度差を縮める
等を理解して頂き、円滑な工事、きれいな仕上がりに協力して頂くようお願いするしかありません。
本当に自分たちの財産であるマンションのことを考えてくれているのならば、必ず理解して下さると思います。