成長しようとしない人
あなたの周りには、若年でしっかりしている、自分より若いのに尊敬できる、そういう人はいますか?
いい青年に出会いました。
それは生まれて初めて患ったインフルエンザから回復し、大規模修繕工事の現場管理に復帰した日でした。
その日はバルコニーの溝・巾木へのウレタン塗膜防水を行う乗り込み日。腕がいいとの前評判があったその青年は親方として、2人の職人とともに入ってきました。
私が休んでいる期間に、下見は済ませていたようです。
(おっ。いい目をしている。 でも若い。)
この業界には、年功序列というものは存在しないという持論はありますが、やはり経験年数というものはある程度は信頼できます。
その点、若いというだけで人間を「安く」見積もってしまう悪い癖が、私にあります。
大半の職人さんは、休憩時間は仕事の話をしません。
そしてスポーツ新聞にマンガの雑誌を読んでいるか、趣味の話をしています。
競馬やパチンコなどのギャンブルの話、それでかみさんに怒られる話、釣りやゴルフ、登山などの話を熱心に語っている輪に入っている時間は、私にとっても楽しく、貴重な時間です。
そんな話をしていても、長年この仕事に携わっているので、仕事も早いし知恵も知識も持った方が多いです。たまにそうでない人もいますが。
対して若い職人さんは、仕事の話をしないのは同じですが、話の内容が浅い。
そしてなにより、電話をいじっている時間が非常に長いことが通常です。
大抵はゲームを含めたSNS、芸能ニュース、動画サイトなどで、若い職人さんばかりが入っている日は、詰所を覗いたら、全員無言でスマホやiPhoneをいじっています。
一応現場監督が詰所にきたということで、手を休めて話をするのですが、私がでていけば「元の作業」に全員戻ります。
全員が全員、そうではないですが、休憩中はもちろん、最低限の段取り、割り振りなどの打ち合わせのみ仕事の話で、あとは仕事と関係した会話をしないのが実情のようです。
そればかりか、居住者が近くを通っているにも関わらず、ゲームの話やおねーさんがたくさんいるお店の話を大声でしている人間もいます。
圧倒的に経験が少なく、そして仕事の会話もしない、仕事にも身が入っていない人間がいる。
そういう見方が重なって、私の「若いというだけで人間を安く見積もってしまう悪い癖」が確立していったのでしょう。
20代ということもあって、その青年のことも心のどこかで「見下した」自分がいたのは確かでした。
朝礼を終え、二人で現場を廻り、今後の打ち合わせをします。どれだけ頭に残るか分かりませんが、この現場のポイントを伝えようと口を開きかけたその時、向こうの口から出てきたのが、まさに私の口から出る予定だった課題・問題点でした。
(はたして言葉と行動は比例しているか?)
口ばかりの職人さんをたくさん見てきた経験上、そういう考えを持つのは無理もありません。
楽しみ半分、不安半分で、青年たちの仕事が始まりました。