マンション修繕工事を成功させる「現場の確認」

現場を確認しないと大変な目に遭う

現場を確認しないと大変な目に遭う

 

これでもあなたは現調なしに見積しますか――?

 

 

施工会社には、「見積項目を送りますので、金額を入れて下さい。」 という見積依頼がよくあります。

 

自分で考えず、図面も見ずに、数量も拾わずに、単価を入れるだけ、こんな簡単な見積作成はありません。

 

そんな、金額だけを入れれば済むような見積は、どのような経緯で依頼されるのでしょうか。

 

それには主に2通りの流れがあります。

 

 

先ず一つ目は、マンションが見積仕様を作成する場合です。

 

これには様々な方法があり、管理会社が仕様を作成し、数量も拾う場合が多いです。

 

管理会社が仕様・数量を作成する場合、専門の施工業者に依頼している場合があります。

 

それ自体はよくあることですが、注意しなければならないことがあります。

 

ここでは詳しく記しませんが、大切なことなので後程記事にいたします。

 

他にマンションが見積を作成する場合がありまして、それはマンションの居住者自体が仕様と数量を作成する場合です。

 

この場合は、建築に携わっている方が手伝うことが多いですが、専門ではないときは見方を誤っていることがありますので、精査が必要です。

 

 

もう一つの経緯として、他の施工業者が作成した見積書から、金額だけを消去して見積依頼をしてくる場合です。

 

結構あることですが、先に調査をする、または図面を拾って見積を作成した会社からすれば全く楽しい話ではありません。

 

受注したいために見積を作成するのであって、他社に見積をしてもらいために、貴重な労力を費やしたわけではありません。

 

その話もここでは掘り下げてはしません。

 

 

このような2通りの経緯で手元に届いた見積項目、通り一遍の単価を入れてマンション・または管理会社に流した結果――

 

これはあくまで例え話ですが、ある会社は、12階建80戸の分譲マンション共用部分の玄関枠・パイプシャフト扉・配管などの鉄部塗装工事と、共用廊下の防滑性ビニル床シートの設置工事を受注しました。

 

修繕委員会までの時間が少ないので、項目に沿って単価のみをいれて、直ぐにFAXを流してほしい」というもので、その通りに動きました。

 

担当のA氏は、見積に費やした時間もほとんどなく、粗利もそこそこ出るので、会社にとっていい工事だなんて思っていました。

 

受注後のお礼も兼ねて、管理組合理事長宅へ伺うためにマンションに着くや否やA氏は
――顔面蒼白です。

 

それもそのはず。そのマンションには、エレベーターが4基もあったのです。

 

鉄部塗装の項目に、エレベーターの三方枠がなかったので気付きませんでした。

 

単にエレベーターが多いならばともかく、同じ階の中でも、一つのエレベーターから降りたところで、2戸しか行けなかったのです。

 

同じ階が繋がっているならば、工事はとてもスムーズに進みます。

 

しかしこれでは手間が掛かってばかりで仕事になりません。

 

鉄部塗装では、2戸分のフロアを施工してから階段かエレベーターで次に移動して・・を繰り返します。

 

長尺シート貼りでも、シートの運搬、材料の切断・貼付、端末シールの打設など、全ての手間が予想をはるかに超えて掛かります。

 

「追加の金額は出してもらえないか」と、A氏は理事会に頼みました。

 

理事会はというと、「しっかり確認しない方が悪いのでは」と引きません。

 

そんな中、管理組合の中に建築関係の居住者B氏がいて、
「最初に見積を出してくれた会社さんと、今回のAさんのところでの金額の違いは歴然としている。というか違い過ぎる。手間が掛かる事は、あなた方理事会の人間も分かっていたはず。それを言葉に出さず騙し討ちのようにその金額で工事を押し付けるのは、もはや取引じゃない。詐欺だ。」と、理事会を一刀両断しました。

 

その言葉で初めて、他社が調査し、見積書を出したものが資料元と聞かされたのです。

 

そうではないかとA氏も薄々は感じていましたが、自社が得をする分には構わないという思いがありました。

 

B氏は理事会の行動を詫びた上で、「このようなマンションもあります。見積をする上で、そのマンションがどんな建物なのかは確認した方がいいですね。」とA氏にアドバイスしました。

 

そして施工会社、管理組合の双方で話し合った結果、金額を幾分上げ、上塗り材を仕様に挙がっていたシリコン樹脂塗料よりも安価なウレタン樹脂塗料に変更したということです。

 

それでも当初見込んでいただけの利益を上げるのは難しかったとのことです。

 

 

――あくまで例え話ですが、実際これに近い話はよくあります。

 

早急な対応を要求された依頼見積であっても、最低でもマンション建物の概要、施工対象物(上の話の中では鉄部)の現状などをたずねるか、調べる必要があります。

 

 

工事後に、「いい工事だった」と双方が思えるようにして頂きたいです。


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