大規模修繕工事を成功させる「成長しようとする人」

成長しようとする人

成長しようとする人

 

今から作業に入る現場での数々の問題点を的確に指摘した青年。

 

果たして仕事ぶりは ―――

 

 

いざ仕事を始めると、手が早い。
あらかじめ洗浄の人間が入って清掃もしておいたのですが、それに加えて微塵も残さないと言わんばかりの清掃を終えると、数ヶ所の問題点をさらに指摘、私の判断を聞くと直ぐに小方に伝達、その伝達の仕方も、的確且つ分かりやすい。

 

自分よりも経験の浅い人間に<どうすればわかりやすく伝わるか>をちゃんとわかっています。

 

ウレタン材を施工する日の朝、ふとバルコニーを覗いたら、青年と他の2人の職人が話をしていました。

 

一瞬、身構えましたが、すぐにその会話が材料の納め方だと分かり安心しました。それは施工後にウレタン防水材が切れやすい箇所の施工方法で、材料の厚みが付きにくい箇所へはこんな感じで塗っていけよ、という内容でした。2人からは、「前も聞いたから大丈夫」という言葉。青年からは「おまえら物忘れ激しいから」と、冗談も含めた楽しそうな会話をしていました。

 

そういう会話は、居住者が聞いても悪い印象は持たないでしょうし、なにより全員のレベルアップを望む向上心が垣間見れます。

 

 

その一方で青年は、若いなりの甘さも持っていました。

 

作業が増えるので、別の職種が占拠している広範囲のねた場(材料を練る場所)の一角を使わせてほしいと言ってきました。

 

翌朝改めて場所を確保しましょうかと伝え、早くにきて自分たちの場所を確保する事を約束しました。

 

それを私とともに占拠中の職長に伝え、朝打合せするということでその方も了承しました。

 

しかし、翌朝朝礼の15分前になっても現れず、連絡もありません。

 

既に例のねた場には、大規模な養生シートが敷かれ、材料が並べられています。

 

通常は朝礼が終わってから段取りを始めるのですが、悪天候が重なり、工事を少しでも進ませたいと思う気持ちが現場全員の共通点でした。

 

それを知っていて――― と思った朝礼前に、電話が鳴りました。

 

「他の現場によっているので、少し遅れます。すみません。」

 

ねた場の話はしませんでした。そして現場にいる職長も、「遅れてくる人間のことなんか考えないよ」といいました。もっともです。

 

10時頃現場に着いた青年は、自分たちのスペースが広がっていないことに憤りました。

 

「スペース広げるって言ったじゃないですか!」

 

「朝早くに来て打合せることが前提でしたよね。遅れるにしても、もっと早くから連絡をくれて、且つ、ねた場を確保してくれと言ってくれていれば、頼んだかもしれない。しかしあなたは連絡も遅いし、ねた場のねの字も言わなかった。それで向こうの職種の人達を説得することは私にはできません。」

 

憤りに火が着くと思いきや、すんなり「わかりました」といつもの口調に戻りました。

 

 

その時点で、最初に持っていた「安見積」は消えていました。

 

そしてその後、工程の打ち合わせも兼ねて、コーヒーを飲みながら現場事務所で色々話を聞きました。

 

若くして結婚し、子供にも恵まれ、仕事も一生懸命でしたが、勤めていた会社があまりよくなく、減給などの憂き目にもあい、その会社を辞めてからも試練の連続でした。

 

その中で、<誰も敵わない程の知識と経験を手に入れてやる>という強い思いを糧に、小さいながらも会社を興し、慣れない書類と日々向き合いながら、同級生の2人とともに頑張っているということでした。

 

しかし、やはり「若い」というだけで、安く見積もられたり、見下されたりすることが多々あると、苦笑交じりに言っていました。私の目が少し泳いだのに気付いていないことを祈ります。

 

彼がすごいところは、消費・浪費・投資をしっかり区別しているところでした。

 

他の会社の人間やお客さんと飲みに行くのは、完全に「投資」として、いろんな話を聞き、自己の向上につとめているそうです。

 

休日は家族と過ごすことが至福の時間ということでした。

 

憶測ですが、家族とふれあう以外の時間は、本を読んだり、色々な勉強をしている事でしょう。

 

 

昼前でしたが、2人に仕事をさせて、私との話に時間を割いてもらって申し訳ない、というと、「あなたとお話しすることは、すごい勉強になります。投資です。」と言ってくれました。 嘘でも素直にうれしいです。

 

 

建築業者はかなりの数あります。

 

それは、「職人としての経験があるから、誰かに使われないで自分で食べていきたい」という思いから、独立する人が多いという背景もあります。

 

その中でも、苦労の末に、その中で培った向上心を武器にして闘っている、そんな青年たちを、私は応援していきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 


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