大規模修繕工事を成功させる「手摺足元の補修」

手摺足元の不具合と補修方法

手摺足元の不具合と補修方法

 

建物には、劣化をしやすい要因がたくさんあります。

 

その中でも、異なる材料が接している箇所の劣化(不具合)というのは非常に多くみられます。

 

例えばコンクリートモルタルは、見て非なるもので、よくひび割れを起こします。

 

モルタルとアルミ建具も異なる材質なので、取り合いをシーリング材で埋めて水や外気が入らないようにします。

 

 

ここでは、アルミ製の手摺とコンクリートについて見ていきます。

 

 

バルコニーの腰壁上に設置されているアルミ手摺の足元。下部にエフロレッセンスが見られる。

<写真1>

バルコニー腰壁上に設置されているアルミ手摺の足元。下部にエフロレッセンスが見られる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腰壁上のアルミ手摺足元のコンクリートが割れている。

<写真2>

腰壁上のアルミ手摺足元のコンクリートが割れている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上の2枚の写真は同じ建物です。

 

写真1をみると、塗装面タイル面の取り合いから白いものが出てきているのが分かります。

 

これはエフロレッセンス(白華現象)といい、コンクリートの成分である石灰質が、水分と一緒に流れ出てきたものです。

 

このことから、コンクリート内部に雨水が入り込んでいる可能性が出てきます。

 

手摺の足元(コンクリートとの取り合い)も黒ずんでいるのがわかります。

 

場所によっては穴が空いているところもあり、アルミの腐食が始まっていることから、支柱の内部に雨水が通っていると考えられます。

 

写真2では、コンクリートが割れて1階の庭に落ちていましたが、幸いけが人や破損物はありませんでした。

 

内部を触ってみると、天気がいいのに少し湿めっていました。

 

これだけ割れてあいているので、内部が濡れていたのか割れた後で雨水が入ったのかは分かりません。

 

角部なので、他のところよりコンクリートが応力に弱く、アルミ手摺の挙動に負けて割れただけの可能性もあります。

 

 

バルコニーのアルミ手摺足元。コンクリートが割れて内部が濡れていて、アルミ手摺の内部に埋まっている支柱の腐食が顕著。

<写真3>

アルミ手摺足元のコンクリートを撤去しているところ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真3では、アルミ手摺の支柱付近にエフロレッセンスが発生していて、タイルも一部浮いていたので、補修のためにコンクリートを斫りとっている最中です。

 

コンクリート内部は濡れており、支柱の最下部はアルミの腐食が発生していました。

 

支柱の周囲はウレタン塗膜防水でおおっていて、支柱廻りから雨水が入ることは考えにくいので、やはり支柱の内部に雨水が通っている、もしくは溜まっていると考えられます。

 

溜まっていないとすると、写真3のようになんらかの形で外に出ています。

 

 

 

 

ルーフバルコニーのアルミ手摺支柱。モルタルとの取り合いの足元が濡れてコケも生えている。

<写真4>

ルーフバルコニーのアルミ手摺支柱の足元。架台との取り合いに水分がみえる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルーフバルコニーのアルミ手摺足元。コンクリートの架台がエフロレッセンスを起こしている。

<写真5>
足元への不具合は、上の写真のように顕著でないが、エフロレッセンスを起こしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上の2枚の写真は、ルーフバルコニーに設置されてあるアルミ手摺の足元の様子です。

 

写真4は、雨もしばらく降っていないのに、足元が濡れていました。

 

支柱内部に雨水が浸入している証拠とみられます。

 

写真5も、内部に浸入した雨水がエフロレッセンスとして出てきているものと思われます。

 

 

雨水が手摺足元から入ると、どういう影響があるか。

 

まずコンクリート内部に雨水が浸透するとコンクリート自体が弱くなります。それによって躯体から剥がれ落ちる危険性が出てきます。

 

それに鉄筋も雨水に触れることで錆びてきて、それが進行すると腐食・膨張し、コンクリートを押し出して躯体から剥がします。

 

さらにアルミ手摺の足元自体が腐食してしまい、穴が開くだけでなく、劣化が進行すると強度がなくなり、折れてしまう恐れも出てきます。

 

 

 

アルミ手摺の端部。樹脂製のキャップがはまっているが、ぴったり付いている訳ではなく、雨水は簡単に入ることができる。

<写真6>

アルミ手摺の端部。樹脂製のキャップがはまっているが、ぴったり付いている訳ではなく、雨水は簡単に入ることができる。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルミ手摺の継ぎ目。ここで手摺同士が繋がっているが、簡単なキャップのようなものがはまっていて、防水性があるとは言えない。

<写真7>
アルミ手摺の継ぎ目。ここで手摺同士が繋がっているが、簡単なキャップのようなものがはまっていて、防水性があるとは言えない。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上の2枚の写真は、アルミ手摺が雨水に弱いことがわかります。

 

写真6では、端にキャップがついています(ちゃんとした写真がなくてすみません)。

 

このキャップは簡単にはめられて簡単にとることができます。

 

パッキンが付いている訳でもなければ、シーリング材が充填されている訳でもありません。

 

よって「雨水はアルミ手摺内に入るもの」と考えて、足元をどうするかを考えます。

 

 

 

アルミ手摺足元の概略。上から、または取り合いから雨水が入るものと思われる。

<図1>

アルミ手摺足元の概略。
上部や側面から雨水は浸入してくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

足元に穴を開け、水より比重の重いグラウト材を注入する。水はグラウト材に押し出されて穴から出ていく。

<図2>

足元に穴を開け、水より比重の重いグラウト材を注入する。水はグラウト材に押し出されて穴から出ていく。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グラウト材が固まり、それ以降雨水が浸入しても、穴から出ていくので溜まることはない。

 

<図3>
グラウト材が固まり、それ以降雨水が浸入しても、穴から出ていくので溜まることはない。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鉄製手摺の支柱足元に穴を開けたところ、水が吹き出てきた。

<写真8>

鉄製手摺の支柱足元に穴を開けたところ、水が吹き出てきた。
下部は腐食が進んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図1は、手摺足元に雨水が溜まっている状態です。

 

ひどいときは、かなり上の方まで溜まっていることもあります。

 

そこで図2のように、下方に1箇所穴を開けます。このとき、大量の水が穴から勢いよくとび出てくることがあります。

 

そして開けた穴からポリマーセメント系のグラウト材を注入します。

 

グラウト材は、比重が水より大きいので、注入することにより穴より下の滞留水は出ていきます。

 

注入が穴の位置まできたら、そこで完了です。

 

図3のように、穴を埋め戻さないことにより、今後雨水が上から来ても排出されます。

 

これに支柱廻りのシーリングを付け加えると、上からと側面から両方の雨水から手摺足元を守ることが出来ます。

 

ポリマーセメント系のグラウト材の他に、低粘度の(流動性がある)エポキシ樹脂も使用されます。

 

 

劣化が進むと、足元を切断して新たな金物で補強するなどの処置が必要になり、最悪の場合は第三者災害へとつながっていきます。

 

手遅れにならない様に早めの対処が望まれます。

 

 

モルタルやシーリング材を塗りたくるだけの補修はだめです。
→ 「鉄筋の爆裂・露筋の補修方法」

 

 

 


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