大規模修繕工事を成功させる「爆裂・露筋の補修」

鉄筋の爆裂・露筋の補修方法

鉄筋の爆裂・露筋の補修方法

 

外壁をよく見ると、ひび割れた箇所などから錆汁(さびじる)が流れてきていることがあります。

 

それは、「爆裂(ばくれつ)」といって、コンクリート内の鉄筋が錆びて、その錆汁がコンクリート表面に出て来ているものです。

 

その鉄筋は、内部で発錆(はっせい:錆を生じること)し、膨張することにより、表面付近のコンクリートを押し出し、コンクリート表面に穴を開けて、錆汁を出しているのです。

 

 

腰壁下部に発生した爆裂。

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腰壁下部に発生した爆裂。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひび割れ付近のコンクリートが全て浮いている。爆裂が起こっており、一部で鉄筋が現れている。

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ひび割れ付近のコンクリートが全て浮いている。爆裂が起こっており、一部で鉄筋が現れている。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新築時、真新しいコンクリートは、「アルカリ性」に保たれています。

 

その中にある鉄筋は、アルカリ性のコンクリートに守られ、錆びずに過ごせます。

 

しかし経年劣化の過程で、外気の二酸化炭素の影響を受けたコンクリートは、酸性に近づきます。

 

この現象を、「中性化」と呼び、コンクリートの劣化を意味します。

 

コンクリートの中性化が起きたところで、劣化しているかどうかは分かり難いです。

 

その代わりに内部の鉄筋がそれを知らせます。

 

中性化を起こしたコンクリート内の鉄筋は、酸性に傾いた影響を受けて錆びていきます。

 

それがひどくなると腐食を起こし、膨張してきます。

 

それに押された表面のコンクリートが ひび割れや欠けを起こし、そこから錆汁を出します。

 

内部は見えないけれど、「あー、中の鉄筋が錆びてるんだな」と分かるこの現象が「爆裂」です。

 

そして、鉄筋に押される、または自重に耐えられなくなった表面コンクリートが剥落し、内部の
錆びた鉄筋が見えている状態を「露筋(ろきん)」と呼びます。

 

これは非常に危険な事で、剥落したコンクリート片により、災害が起こる恐れもあります。

 

調査の際は、少しの錆汁・少しのコンクリートの浮きも見逃さないよう、細心の注意が必要です。

 

 

 

手前は表面コンクリートが落下して露筋が起こっている。

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手前は表面コンクリートが落下して露筋が起こっている。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腰壁開口部の露筋。被り厚が少ないのと、雨が滞留することで、内部の鉄筋が腐食したものと思われる。

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腰壁開口部の露筋。被り厚が少ないのと、雨が滞留することで、内部の鉄筋が腐食したものと思われる。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆裂・露筋は、「ポリマーセメントモルタル充填工法」と呼ばれる補修方法にて直します。

 

 

この補修方法は、大まかに言って、

 

 ①補修箇所の確認
 ②脆弱部(ぜいじゃくぶ)の撤去
 ③シーラー塗布、プライマー塗布
 ④ポリマーセメントモルタルで埋め戻し  

 

 という流れで進めます。

 

 

それぞれの工程で注意したい点があるので簡単にまとめます。

 

①では、少し前の行で記述した様に、少しの錆汁もコンクリートの浮きも見逃さない様にします。

 

②の工程では、単に劣化したコンクリートの欠片が取れたところで、そのまま埋め戻しても劣化したコンクリートの面から埋め戻し材の浮きが再発する可能性があります。

 

撤去したコンクリート面より広い範囲のコンクリートを撤去し、脆弱部を完全になくします。

 

その上で、ホコリや砂粒などの異物を清掃にて除去し、鉄筋も錆を撤去します。

 

③は、鉄筋の周りのコンクリートをアルカリ性に戻すため、また埋め戻し材料成分のコンクリート内部への吸い込みを防止するための「アルカリ性付与剤」、鉄筋に錆止めを施す「防錆剤」などを適切に施します。

 

各材料メーカーから様々な補修システムが出ていますので、適切な材料を使用します。

 

④では、埋め戻し用ポリマーセメントモルタルを配合・混ぜ合わせ等を適切に行い、くぼみに埋め込んでいきます。 

 

補修箇所が深い場合は、いっぺんに施工が出来ないので、数回に分けて埋め戻していきます。

 

メーカーによっては、厚付け用のポリマーセメントモルタルがありますが、塗り厚にも限度がありますので、無理な工事は避けます。

 

 

タイルの剥落同様に、鉄筋の爆裂は第三者災害を引き起こす劣化でありますので、各材料の性質と役目をきっちり理解し、補修に臨みましょう。

 

 

 


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