タイル面の劣化(ひび割れ)
躯体コンクリートやモルタル面同様、タイル面にも「ひび割れ」は起こります。
タイルの「浮き」が見た目では分かり難いのに対して、「ひび割れ」は直接確認する事が出
来ます。
しかしひび割れが起こっているタイルの下地(コンクリートやモルタル)までは確認できません。
表面的な補修は厳禁です。しっかり下地を確認し、適切な補修を行ないましょう。
ひび割れの要因として、
●交通量が多いインフラ(鉄道、道路)などが近く、その振動を受けるため。
●地震による振動を受けたため。
●建物の不同沈下が起こったため。
●下地のコンクリート躯体やモルタルの劣化
(ひび割れや爆裂など)を受けたため。等です。
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下地のコンクリートにひび割れが生じていると思われるタイルのひび割れ。コンクリートの打継部はタイル面もひび割れが入り易い。
地震などの振動に関しては、その都度対策を試みるしかありません。
建物の不同沈下は、地盤が均一でないために起こるので、地盤改良が必要です。
しかし、下地コンクリート躯体やモルタルの劣化から起こるタイルのひび割れは、下地の不具合の問題なので、補修しても再発の可能性があります。
ここで「下地の不具合の問題」といいましたが、新築時に「健全な」工事をしているマンション(躯体コンクリートも適切に打設され、仕上げのタイルもしっかりと施工された)でも、コンクリートの乾燥収縮などでひび割れが入り、それに追従する形でタイル面の割れてしまいます。
それよりも心配しなければならないのは、新築時に「いい加減な」工事をしているマンションです。
出来上がったマンションを見ると、普通の方からみると「きれいなマンション」です。
しかしその道に詳しい方からみると「見えないところで手を抜いている」のがわかります。
そのようなマンションは、コンクリート打設が適切になされてなく、表面がデコボコの状態、「す」やジャンカがあるにも拘わらず、タイルで仕上げる、打設後の養生期間を置かずにタイルを貼っているなど、タブーと言われることが平気でなされています。
くり返しになりますが、補修工事の際は、下地の状況をしっかり確認し、補修方法を検討する必要があります。
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開口部(入り口や窓の様な、サッシや枠が入っている箇所)の四方は、周りから応力を受けるので、下地コンクリートはひび割れを起こし易い。写真は、(おそらく)タイルのひび割れから入った雨水が、コンクリートの成分である石灰質を運びだしている「エフロレッセンス(白華現象)」。コンクリートが雨水に侵され、劣化が始まっていることを示す。
又、タイル自体は割れていなくても、タイルとタイルの間に詰まっている「目地モルタル」が割れたり、タイル際から剥がれたりしていることがあります。
これは、新築時に適切な調合や撹拌(かくはん)を怠った事、又はコンクリート躯体の動きに追随出来ない、硬くなる目地モルタルを使用した事が要因と考えられます。
タイル面のひび割れは、層間(タイル面と張り付け面の間、又は下地モルタルと躯体コンクリート間)へ外気や雨水を浸入させ、浮き・剥落を引き起こす原因になるので、適切な対応が望まれます。
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屋上付近のセットバックになっているタイル面のひび割れ。上の写真同様、エフロレッセンスが起こっている。セットバック面は、壁ではなく、屋根と思った方がいい場所。それを踏まえたら、早急な処置が必要である。
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目地モルタルがタイルから剥離している。目地モルタルの痩せや周囲の挙動が原因となる。
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下地のコンクリートもひび割れて、その成分の石灰質が出てくるエフロレッセンスが起こっている。
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下地の影響を受けてひび割れを生じている。