防水層の劣化(バルコニー)
バルコニーの床面も日々劣化しています。
「シートを貼れば見栄えはいいけど、高いし。
下もバルコニーで、漏水しても大事にはならないから、今回はやめとこうか。」
あなたのその判断、少しだけ思いとどまって頂けませんでしょうか。
近年、新築時からバルコニーに防滑性の塩ビシートが貼られているマンションが増えてきました。
しかし、過去に建てられたマンションのバルコニーは、床面が灰色のモルタルであることが多いです。
このモルタルは、「防水モルタル」とよばれるもので、防水材が混合されたモルタルです。
防水という名前がついてはいますが、その効果は一時で、時間が経つと水が表面のモルタル、そして躯体(コンクリート)へと浸透していきます。
コンクリートは、しっかり施工されて詰まっていれば、防水工事が要らないとも言われています。
しかしバルコニーの場合は、片持ち梁といって建物から持ち出された部位に当たるため、バルコニー自体の重さの影響で力が掛かり、躯体にもひび割れが起こりやすくなります。
小さなひび割れでもそれが水路(みずみち)になり、下階のバルコニー天井から水が降ってくるなどということも起こります。
愚図ついた天気が続き、ずっと部屋干しが続いていたが、久しぶりにカラッカラのいいお天気なので、洗濯物を山の如く干して出掛けたAさん。
夕方帰って来て洗濯物を取り入れてビックリ!お気に入りのブラウスがびっしょびしょ。
何があったのかと怒り半分、不可解半分、とりあえずバルコニーに出てみると、ブラウスを干していたとみられる場所の床面がかすかに濡れていました。
ひょっとしてと思い、おそるおそる天井を見てみると、そこにはなにか白い物体が線状に伸びていました。
この白い線状のものは、天井に入ったひび割れから水と一緒に出てきたコンクリートの成分(石灰質)です。
この日、Aさんの上の階の植物が大好きなBさんは、天気が良すぎるので大事な植物たちが枯れてしまっては大変と、大量の水を植木にあげていたのでした。
それが床面を浸透し、おそらく躯体コンクリートに入っているだろうひび割れを「みずみち」にして、Aさんのブラウスに降り注いだのでありました―――。
Aさんには悪いですが、バルコニーの洗濯物で良かったです。
コワいことに、バルコニーの床面から下階への漏水は、バルコニーの天井に出てくるとは限りません。
室内に水が来てしまうことがあるのです。
「バルコニー床面の勾配は、外の溝に向かってるじゃない。室内には水はこないよ。」
と思われる方もいるでしょうが、モルタルやコンクリート内はそんな表面の勾配は関係ありません。
コンクリート内のひび割れやジャンカ内などを「みずみち」にして色々な箇所から出てきます。
Aさんのお宅は、「運よく」 バルコニー天井に出てきたまでです。
仮に、ここでAさんがシーリング材とコーキングガンをホームセンターで買ってきて、自分で天井にシーリング材をなすくりつけたらどうなるでしょう?
一時的には水のボタボタは止まるでしょうが、いつもの「みずみち」が塞がれた水たちは、行き場をなくして呆然としているところに、第二の「みずみち」があることに気付き、そこを進みます。
そして行き着く場所が、お部屋の中ということもあるのです。
今までは小さかった「第二のみずみち」は、水が通りやすくなっていきます。
時間が経って、Aさんが塗ったシーリング材も剥がれてくれば、部屋内にも、、バルコニーにも漏水が起こり続ける可能性があります。
それらを解決するために、防水や塩ビ長尺シート貼付が必要になってくるのです。
漏水は、原因箇所からの水を止めてしまわないと解決にはなりません。
どんなに漏水している場所へ直接止水処理をしても、他の場所へ漏水が移れば意味がありません。
そしてバルコニーの床面工事は、「お金がないから今回の大規模修繕工事から外そう」は絶対に後悔します。
この記事の内容も踏まえ、次の記事では「バルコニーの床面工事を先送りにして欲しくない理由」をほかの観点からもみていきます。
続きをみる → 「大規模修繕時にバルコニー床面工事をする3つの理由」