マンション大規模修繕の必要性(修繕=元に戻す)
日本のマンションは、タワーマンションでは建物自体を軽量化できるALCも使用されていますが(軽いため)、基本はRC(鉄筋コンクリート)やSRC(鉄骨鉄筋コンクリート)で建てられています。
木造の建物に比べ、コンクリート造の寿命は長いと言われています。
RC造やSRC造の建物は、工種や工程がびっくりするほど入り組んでいますので、完璧な建物を建てるためにゼネコンの担当者には、豊富な知識、徹底した工程管理、信頼される人格などが求められます。
決まっている工期内で、様々な職種の職人がひっきりなしに出入りするので、細部まで完全に掌握することは大変な労務だと思われます。
仕事ができる担当者、そして職方に恵まれたマンションは、新築当初の建物の強度や安全性を永く持続すると思いますが、やはり経年の劣化には勝てません(このサイトでは年数が経つことを、経年という言葉を使います)。
新築時から、マンションは紫外線や雨風にさらされて、仕上げ面や内部の鉄筋・コンクリートは日々傷んでいきます。
十数年たてば、建物のいたる所にひび割れが生じてきます。
弱くなった塗装面が剥がれてくるかも知れません。
コンクリートの中の鉄筋が錆びて、サビの汁が壁に流れてくることもあります。
タイル面がもしあるとすれば、見えないところで壁から浮いている可能性もあります。
屋上も気にした方がいいです。
普段目にすることはありませんが、建物を雨から守る大切なところです。
新築時にしっかりした工事を行っていても、やっぱり経年の影響で建物は劣化していきます。
それは建物が建っている環境によっても変わります。
例えば幹線道路や工場が近いと、排気ガスやばい煙で壁や屋上への汚れがひどくなります。
鉄道が近いと、振動が建物に及ぼす影響や、列車のブレーキ時の鉄粉による鉄部への影響も考えられます。
海に近いところでも、塩害で鉄部が早く錆び出します。
そして一番こわいのは、しっかりした工事がなされていないマンションの場合です。
前にもお話ししましたが、RC造やSRC造の建物は、様々な業種の作業が行われ、これを完璧に施工管理するのは大変なことです。
ですので、細部の確認がおろそかになったり、目の届かないところでの手抜きに気付かずに建てられることもあります。
例えばコンクリートですが、工場にて粗骨材・細骨材・セメント・水などが、現場用途や気候などに合わせて適切に配合され、ミキサー車で現場に運ばれます。
このコンクリートをポンプ車で建物の型枠に打設する際、そのままだとドロっとしていて、たくさん配置した鉄筋間や細かいところに入り込まないと考え、途中で水を足したりするのです。
これによって、作業はスムーズに進み、きれいなコンクリートが出来上がるのですが、規定の配合ではないので、強度不足や早期劣化の恐れが生まれます。
また、加水などを行わない適正なコンクリートでも、打設の際にバイブレーター(振動機)の使用を怠る、あるいはやり過ぎると、細部にコンクリートが行かずにジャンカが発生したり、粗骨材(砂利)とその他の材料が分離し、強度が著しく低下したコンクリートができます。
他にも、鉄筋の配置がコンクリートの表面に非常に近い「かぶり厚の不足」や、コンクリートの乾燥時間をないがしろにした際に起こる「仕上げ材の剥離」、防水の納まりを甘く見ていた際に起こる「漏水」などが、新築時に起こりがちな不具合の例です。
その他、業種が多いこと、その業種同士がお互いの作業に関して関心が薄いことなどで、多くの不具合が生じることもあります。
これらを踏まえ、現状の建物の状態を調査して、どうすれば元の状態に戻す(修繕する)ことが出来るかを考えていけば大丈夫です。
続きをみる → 「マンション大規模修繕の必要性<改修①:設備>」