大規模修繕工事を成功させる「シーリング工事の手抜き撲滅」

シーリングの手抜き工事を許すな!

シーリングの手抜き工事を許すな!

 

大規模修繕工事で行われる工事の分類は、大きく括れば「仕上げ工事」になります。

 

悪くなった箇所、若しくは古くなったものを、修繕し新しいものに変える。

 

それが大規模修繕工事の仕上げ工事です。

 

竣工後の「見た目」が綺麗ですと、きちんと工事をしてくれたんだな、と思うものです。

 

しかし、本当に「見た目」だけで、実はでたらめな工事をおこなっていたとしたら、どんな気持ちになります?

 

 

 

管理会社のSさんから聞いた話です。

 

あるマンションで大規模修繕工事を行っていました。

 

その中に、壁の目地に充填されているシーリング材を打ち替えるという工事がありました。

 

細かい工程を無視すると、既存のシーリング材を撤去し、新しいシーリング材を打つ、という順序です。

 

そのマンションの壁の目地は、当初壁面から少し凹(へこ)んだ様な状態でした。

 

これは以前の工事の際、ヘラで少し凹ます様に施工しているからでしょう。

 

ある朝、居住者のAさんがベランダにでました。

 

「ベランダのサッシ回りもシーリング工事をしているからベランダに出ないでください」、とは言われていたのですが、邪魔になるであろう私物を室内に入れようと思ったのです。

 

ふとサッシ回りのシーリング材を見ると、目地の際にマスキングテープが貼り付けられているのを見ました。

 

まだ古いシーリング材はそのままです。

 

気になって壁を見ると、やはりマスキングテープを貼り付けていて、古いシーリング材はそのままです。

 

「ああ、こういうものか」と、対して気にせず、荷物を抱えて室内に戻りました。

 

しばらくして、足場の上を人が歩く音がして、ベランダにも入ってきました。

 

ごそごそと作業する雰囲気を感じながら、ふと違和感を覚えました。

 

カーテン越しに窓の外を見ると、銀色の筒のようなものを持っています。

 

「あれは撤去に使う道具でなく、シーリングを打つものではないか」、と素人目でも分かりました。

 

しかし、撤去しながら新しいシーリング材を打つというやり方かもと、他の人より幾分楽観主義者のAさんは、やはり気にしませんでした。

 

昼前には、ベランダ周囲のシーリング材は全て打たれていました。既存の凹んでいたシーリング材は、壁と同じ面くらいに高くなっていました(再度ベランダに出たそうです・・・)。

 

その話をAさんから聞いたSさんの同僚Tさんは不審に思い、現場代理人Xさんを問いただしました。

 

どう考えても無理がある。時間も、工程順序も(通常、打ち替えは既存を撤去した後でマスキングテープを貼り付ける)。既存のシーリング材は撤去されていないのではないか、場合によっては該当箇所を切って調べる と。

 

しどろもどろになりながら答えていたXさんですが、観念してシーリング工事の棒芯を呼んで、既存のシーリング材を撤去せずに新しいシーリング材を打ったことを白状させました。

 

安い請負金額で、工期もまともにないので、そうせざるをえなかった、というのが理由でした。

 

現場代理人の立場でありながら、Xさんはシーリング工事の手抜きを見て見ぬふりをしていました。

 

工程写真を撮るときは、電話で連絡が来るので取りに行きます。

 

当然、シーリング材撤去の写真も撮ります。

 

しかし、それは一部を撤去している写真でした。

 

新築のシーリング工事に毛が生えた様な金額で打ち替え工事を請け負わせて、何も言えないという負い目があったのでしょう。

 

しかしマンション側はたまったものではありません。

 

打ち替え工事といいながら、打ち替えてない手抜き工事なのですから。

 

直ぐにマンション側から該当箇所の工事のやり直しの指示が出ました。

 

全てをやり直すのかといえば、そうでもなく、共用廊下側や足場で囲まれていない範囲は、しっかり打ち替えを行っているとのことで、それは他の居住者の方も目撃しているようでした。

 

そしてベランダのサッシ廻りは、既存があまり傷んでなく、大きく三角打ちをしていました。

 

それが「増し打ち」をしたという解釈になり、やり直しは免れたようです。

 

施工会社は、管理会社とマンション側に平謝りし、平常に戻ったとのことです。

 

 

 

確かに、あまり傷んでいない箇所や、サッシ廻りなど撤去が困難な建具があるときは、打ち替えでなく、増し打ちをすることもあります。

 

しかしそれは事前に調査し、そういう工事をすると説明した上か、若しくは「打ち替えをする予定でしたが、シーリングがあまり傷んでいないので、増し打ちに変更します。その分の費用はマイナスとして精算します」と事前に伝えるべきです。

 

「安かろう悪かろうじゃね。でももっと適正価格をマンションの人たちに知ってもらうことも大事よね」と、Sさんは言われていました。

 

 

マンション側が目を光らせないと手抜きを防ぐことが出来ないなんて、ちょっと悲しいではありませんか。

 

施工会社の皆さん、業者決定をする皆さん、もっとみんなが最後に笑顔になる工事の進め方を考えましょう。

 

 

 

増し打ちの方法を間違えるとこんな不具合がでる!
→薄すぎてシーリング材が固まらない!「薄層未硬化現象」とは?


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