避難ハッチ廻りのシーリング材打替え
同じ建物の中でも、場所によりシーリング材の劣化の仕方は異なります。
その中でも、バルコニーの床にある避難ハッチ廻りのシーリング材は、劣化が顕著な箇所でしょう。
雨が降れば雨水に晒され、水を流されれば水に晒されます。
とはいうものの、大規模修繕のはるか前から 「避難ハッチ廻りからの漏水」 に関する連絡は多いです。
部屋内ではないのですが、「洗濯物が上からの水で濡れた」 という苦情をよく聞きます。
「それは困るね」という事で、足場がないときは、お部屋の中を通らせて頂いてのバルコニー床面工事を行います。
ここで注意したいところは、前出の記事 「内部に水が入っている目地シーリングはどうする?」内で出てきた目地同様、既存の目地を撤去したら、内部に水が溜まっている場合があることです。
ここでもやはり、天気が期間を狙って内部の水を乾燥させてから新規のシーリング材を打つ必要があります。
新築時の納まりで、バルコニーの床面よりも目地の方が低くなり、そこに水がたまりやすい場合は、新規のシーリング材は厚みを付けて、床面よりも高く持ってくる必要があります。
しかし、このような処置が出来ない場合があります。
床面と避難ハッチの枠との高さが同じ、またはまれにですが、避難ハッチの方が床面よりも若干低いこともあります。 こうなったらシーリングではどうしようもありません。
そこで、「たまるのならば逃がせばよい」 と考え、側溝までの小さな水路(みずみち)を作ります。
●勾配も加味しながら、サンダーにて切込みを2本 水平に入れていきます。
●切込み間を「のみ」や「ピック」にて斫り取っていき、溝を作成します。
●そしていびつになっている箇所をポリマーセメントモルタルで成形していきます。
●最後はみずみちに塗膜防水処理を行います。
上記を行う際 注意したい事は、
● 避難ハッチ廻りにたまった水が、全てみずみちを流れていくかを考える。
● ポリマーセメントモルタル、塗膜防水を施す際も、勾配や段差などに気を配る。
● みずみちの巾・深さは、塗膜防水の厚みを加味して、水が流れるのに十分な広さを取る。
などです。
シーリング打替えのみですと音の問題はそこまで考えないのですが、みずみち作成はかなりの音を出しますので、事前おしらせにその旨を明記することを忘れないようにします。
どのような工事を行うにせよ、足場を使用せずに居住者様にお宅に中を通して頂く場合は、工期は少し余裕を持って伝えておくべきです。
それで早く終われば、施工者も居住者も安心することができます。
同じマンションの全ての避難ハッチで、同様な事例が発生していることは少ないですが、アンケートにて確認して調査してみても良いでしょう。そしてそれが、大規模修繕に向けての大事な資料になっていきます。
<写真>
避難ハッチ廻りに水がたまるため、溝を作成して流れるようにする。
<写真>
避難ハッチ廻りに水が溜まらないように溝を作成する。凸凹を修正するために樹脂モルタルを使用する。
<写真>
避難ハッチ廻りに作成した溝へ、防水処理を施す。