機械式駐車場がある場合の修繕積立金は？
分譲マンションにおいて、建物や敷地内の維持・修繕に使われる費用は、区分所有者から毎月集める「修繕積立金」によって賄います。
この修繕積立金は、マンションの生涯修繕の工程表というべき「長期修繕計画」に沿って決められます。
長期修繕計画で分かることは、「何年後にこんな修繕・改修が必要なので、そこまでにこれだけお金がないといけませんよ」という事が、およそ３０年の将来に亘って表とグラフで示されてあります。
これにより、各戸の修繕積立金が決まってくるのですが、一般的な修繕積立金の額よりも高くなってしまう場合があります。
その中のひとつが、「機械式駐車場がある場合」です。
建屋の中をエレベーターのような機械で車を収容することで、少ない面積に多数の駐車を可能にした「タワー式」や、鋼材を組み合わせて１台分のスペースに２台以上を停めることを可能にした「二段式」や「多段式（三台以上）」などがあります。
これらは様々な電動部品や消耗部品で組み合わさっているので、定期的なメンテナンスはもちろんのこと、年数が経過すると大規模な部材交換や修繕の必要も出てきます。
もちろん、通常の外に停める場合やピロティ内に車を停める「平置き」駐車場も、年数が経過すればオーバーレイなどのアスファルトの表層補修、ラインや駐車番号の引き直しなども行われますが、機械式駐車場の修繕金額に比べれば対したことはありません。
そしてその費用も定期的に区分所有者から集めなければなりません。大抵の場合、それは修繕積立金として集められます。
使用者からの毎月の駐車場使用料もそれに当てることは可能です。しかしそれは月々の管理費の支払いに充填されているケースも多く、しかもそれだけでは修繕費を賄うことは難しいので、やはり修繕積立金だのみになります。
しかも機械式駐車場は、マンションの共用部に当たりますので、通常の青空駐車場やピロティ内に車を停めている、または駐車場自体使用していない区分所有者であっても均等に支払うようになります。
ではマンション内に機械式駐車場がある場合、そのためにどれだけ修繕積立金を集めなければならないのでしょう。
国土交通省が策定した「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」には、通常の修繕積立金の目安の他にも、機械式駐車場がある場合の積立金の目安も分かるようになっています。
表 ： 「マンションの修繕積立金に関するガイドライン（国土交通省策定）」より、
機械式駐車場がある場合の修繕積立金加算額
マンション購入前という前提で、ガイドラインでは具体例を挙げています。
「マンションに、２段（ピット１段）昇降式の機械式駐車場が50台分あるとします。購入を予定する住戸の専有床面積が、80㎡、マンション全体のマンション全体の専有床面積の合計が6,000㎡（負担割合が80/6,000）の場合、
80/6,000 ≒ 0.0133 なので、
7,085円(月額修繕工事費の目安) ☓50台
☓0.133 ＝ 4,723円 となります」
通常の修繕積立金が16,000円くらいですと、さらに機械式駐車場の分を加えると、21,000円程度になるという訳です。
参考にしている「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」ですが、マンションを購入する方々が後々困ることのない様、多数のサンプルデータを元にして、「あなたのマンションで専有床面積がこれくらいなら、月々の修繕積立金はこれくらいですよ」ということを教えてくれているのです。
なぜわざわざ国土交通省がそのような事をしているのか。それには理由があります。
マンションの販売業者（デベロッパー）の策略で、修繕積立金の額を少なくすることで、購入者は気分的にマンションを購入しやすくなります。
しかしその修繕積立金の額を見直すことなく月日が流れましたら、いざ修繕時期になると、お金が足りないという事態に遭います。
こうなると「工事の為の一時金の徴収」「金融機関から借りる」「必要な工事なのに先延ばしになる」などの手段を取らなければならなくなります。
そうなる前に、自分たちのマンションのことを自分たちで知り、適切な積立と適切な工事が行える様、国土交通省と有識者の方々が動いたという訳です。
便利なものにはそれなりの代償がついてきます。
自分たちのマンションには、どういう設備があり、それには将来どのくらいのお金が掛かるのかを、早い段階で把握しておきましょう。