室内犬ナナが外飼い犬になった日
我が家にやってきた雑種犬ナナは、すくすくと育ちました。
もう子犬じゃないねという大きさになったある日、妻のお義父さんが作ってくれた犬小屋をスタンバイさせた庭に、ナナを出しました。
初めは、「ん? なんの遊び?」みたいな少し困った顔をしていたのを憶えています。
実は私も妻も、室内犬というものを飼ったことがなく、実家でも犬は外飼いでした。
妻の実家の犬は、20年以上生きた強者もいました。
外の方が広いし、犬にとっても幸せだろうという考えを、普通に持っていました。
でもいきなり外に放り出されたナナは、とても幸せそうには見えません。
掃き出し窓までやってきて、ガラスをカリカリします。
クーンと鳴きます。
可哀想になって少しだけ中に入れます。
入れては出し、入れては出しを繰り返していると、ナナの方も外にいるのが当たり前と思ってきたらしく、カリカリするのはゴハンのときくらいになりました。
お義父さんから作って頂いた犬小屋でも寝るようになり、外飼い犬が板に付いてきました。
外飼い犬として定着しても、何かにつけて窓の近くにきていろんなアピールをします。
「散歩いきましょ!」
「ゴハンまだなんすけど」
「風が吹いて怖いんですけど」
などなど。
なんでもないようなことを、大問題にすることもしばしば。
「キューン、クーン」
今度はなんですかと、窓の外をのぞいてみると、風で飛ばされてきたであろう、お菓子の空袋が転がっていました。
それくらい自分が気にならない場所にくわえて持っていけばいいのに、と思いながら片付けます。
それは今考えると、やっちゃいけないことだったのか?と思うときがあります。
なぜならそれ以降、何かにつけて「キューン、クーン」で私たちを呼びつけて、庭に落ちているゴミやどこからか飛んできたものを拾わせます。
まあ、庭が片付くのでよしとしています。 ナナの周囲にかぎって。
番犬としての能力はピカイチでした。
知らない人には容赦なく吠えます。
もちろん犬にも吠えます。
しかし、知っているけど犬を苦手としている人にも、なぜか吠えます。
感情が表情や雰囲気に出てくるのでしょうか。
それを読む力があるのなら、さすが犬というべきでしょう。
見ず知らずの車が前の道路に停まったら、やっぱり吠えます。
車の音も同様です。
私が自分の車でなく、代車などで帰宅したときは、エンジンがかかった車の中まで聞こえるくらい吠えています。
それでも車から降りる時点で、吠えるのをやめます。
見えない場所にいるのですが、においなどで分かるのでしょう。
家族のことは、みんな好きなようです。
最初のころは、家族が帰ってきて、庭に顔を出したときは、ちょびっとシッコを出していました。
初めの何回かは、「大丈夫か?」と心配しましたが、それは通称「うれしょん」という行為であることを知りました。
あまりの嬉しさで興奮し股が緩くなり、少々もらしてしまうそうです。
子犬や小型犬などがよくするそうです。
ナナは外飼いですが、室内犬のうれしょんもあるそうです。
飼い主さんたちは大変です。
ナナは少ししたら「うれしょん」をしなくなりました。
それでも顔を見れば、ちぎれんばかりに尻尾を振るしぐさは本当にかわいいです。
ただ尻尾を振るのではなく、身体を地面に這いつくばらせて尻尾をブンブン振るのです。
飼い主冥利に尽きるというものでしょうか。
果たして外飼い犬として庭の主になったナナ。
「近所の番犬」として活躍(?)していきます。