雑種犬ナナの散歩(外飼いの仲間たち)
雑種犬ナナには、決まった散歩コースはありません。
ママと散歩に行くときは、事務的な短いコースがあるようです。
彼女もそれに慣れ、事務的にママの散歩に付き合っているようです。
私と散歩するときは、玄関を出て右に行く時もあれば、左に出る時もあります。
犬もその時の気分で散歩のコースを変えるのでしょうか。
ナナが他の犬と違うのでしょうか。
とにかく決まったコースがなく、適当に歩き出します。
でも頑として譲らないことがあります。
それは自宅がある一画を、少しでも離れるということ。
玄関を出て、右に出て、右折して、私が右折しようとすると、全力で阻止します。
「家の周りを一周しておしまい!」という感覚があるのでしょう。
出来る限りナナの願い通りに進むようにします。
若いときは少し遠くの河川敷まで行ったりしてました。
でも年々体力も落ちてきている様ですし、病気持ちでもありますし、長い散歩にならない様、途中からはこちらが道案内します。
散歩中、色んな家の前を通り過ぎ、何件かの外飼い犬がいる家も通過します。
当然、顔見知りになるようで、最初はぎゃんぎゃん吠えられていましたが、今ではそれもなくなりました。
初めからナナのことが好きだったのが、ナナよりかなり若いコタローです。
唯一、近所の犬で私が名前を知っている犬がコタローです。
コタローはナナが近づいてくると、庭のアルミ格子から鼻先を突き出し、シッポを振ります。
ナナが家の前を移動し、通り過ぎるまで、ナナの方に来て鼻先を突き出し、シッポを振ります。
そしてナナが離れていくところで一声「ワフ!」と文句をいいます。
そう、ナナはあまりコタローに興味がないらしく、一瞥もくれない時があります。
コタローは可愛い柴犬で、私は挨拶するのですが、コタローはナナしか見ません。かなり失礼です。
ナナは熟女なので、若いコタローは子供扱いなのでしょうか。
たまにコタローの期待に応えるべく、立ち止まってナナをコタローと対面させます。
しかし、チラ見するのみで「パパ早よ行こー!」とせかされます。
コタロー、すまない。
いつかはナナも君のことを気に掛ける日が来るよ。
若いころのナナが少し苦手だったのは、私が密かに「ウシ」と呼んでいる犬です。
図体がでかいからそう思ったのではなく、白黒の模様が、乳牛にそっくりだったからです。
バーニーズ・マウンテン・ドッグとラブラドールのミックスかと思われる見た目です。
確かに図体はでかい。しかも柵にしているアルミ格子は、ウシが頻繁に噛んでいるのでしょう、一部がひん曲がっています。
一番初めにその家の前を通ったときは、我々の気配を感じたのか、犬小屋(牛舎?)から出てきて、ひん曲がったアルミ格子を噛みながら吠えまくってました。
ナナはドン引き。シッポも撃沈です。
「はよ逃げるよ」と言わんばかりにリードを持つ私を引っ張りました。
ナナが散歩コースにしている中に、その家の前も含まれたはずですが、しれっとリードを引っ張ったり、曲がり角で一旦何かに興味を持ったフリをしてくんくんした後に、それとなくその家の通りから外れようと必死でした。
その選択が良かったのかどうか今になっては分かりませんが、ナナを引っ張り、ウシの家の前をわざと通るようにしました。
最初のころは吠えまくられ、シッポをたたんでその場を後にする日々が続いたのですが、お互い慣れたのか、小屋から出てきても吠えずにこちらを見るだけになりました。
ナナもいつしか びくつく事なくウシの前を通り過ぎる様になりました。
しかし散歩コースの流行が変わったことで、一定期間、ウシに会う機会がなくなりました。
その後、またそちら方面に散歩コースが入ったので、ウシの前を数回通りました。
でも以前の反応はなく、小屋から顔をのぞかせるだけの時もあれば、こちらに気付いているはずなのに顔も出さないこともあります。
既に顔見知りなので「おう、またあんたか」 てな感じで、伏せの姿勢で上目遣いにこちらを見る姿は、安心感と寂しさを半分ずつ胸に運んできます。
あの威勢のいい姿は、今でも新参者である他の犬には見せているのでしょうか。その犬のシッポをたたんでいるのでしょうか。
一つだけ言えることは、ナナが年齢を重ねた分、ウシも確実に年齢を重ねているということです。
ウシさん、たまには前みたいにガウガウ吠えてください。格子を噛みしだいて下さい。
元気な姿を見せてください。