大規模修繕工事を成功させる「養生への考え方」

足場部材の仮置きも養生を

足場部材の仮置きも養生を

 

現場管理の見習いを3現場こなし、今回が初めての現場代理人として現場につくKさん。
工事説明会から掲示板設置・近隣挨拶まで、そつなくこなしてきました。

 

今日は工事の着工日。
大型のトラックに乗った足場の部材が大規模修繕工事の現場であるマンションに運び込まれます。

 

マンションに到着し、朝礼・KYK(危険予知活動)などが済み、作業が始まりました。
足場架設場所全てに、トラックを横付けして足場を組むことが出来れば楽ですが、そんなに都合よくはいきません。
大抵、現場内で小運搬を行います。
そして奥まったところに部材を運んで、次々と床面に置いていきます。

 

Kさんはふと気になります。
部材は、マンションの中庭の床面であるコンクリート面に、直に置かれています。

 

Kさん:「なにか敷かないのですか?」
職長さん:「このコンクリは古くなっているから、キズなんか分からないから大丈夫」。

 

Kさんは少々納得行きませんでしたが、今からコンパネを敷くのも手間ですし、職長さんが大丈夫って言っているので、それ以上気にしませんでした。

 

足場が数段架かったとき、そこに建地を何本も立てかけて置き出しました。
しかも、「カーン」とも「コーン」とも聞こえる大きな音を立てて・・・

 

「大丈夫かな・・・ちょっとあんまりだから止めさせよう」
と、職長に話しかけようとしたその時、「おはようございます」と、設計監理のOさんが姿を現しました。
足場の確認をしに来たOさんは、Kさんから敷地内に目を移動させるなり、「ちょっと工事を止めて下さい」と言いました。

 

職長・職人を全員集めて、工事を止めた理由を話しました。
「仕様書に記載されている仮設工事の注意事項のなかに、『部材を仮置きする際は、必ず床面にキズが入らないよう、板などを用いて養生を行うこと』と書いてあります。今はどう見てもそれを怠っています。Kさん、仕様書は読まれましたよね?」

 

口を開きかけたKさんを制し、「私が大丈夫といったからです」とOさんに頭を下げたのは、職長さんでした。
Kさんは、「管理する立場でありながら、自分で判断しなかった私の責任です」と2人に頭を下げました。
そして職人さんたちに、今すぐコンパネを用意し、足場に立て掛けているものも含め、全ての部材をその上に置く事を指示しました。

 

その様子を見ているKさんと職長さんのそばで、どこからかほうきを持ってきたOさんが、今まで部材があった箇所を掃き始めました。
当然、床にたまったゴミやチリは無くなり、床面が現れます。するとどうでしょう。部材を置いていた場所には白いキズが無数に入っており、足場に立て掛けていた部材の下は、削れているところもありました。

 

「私が仕様書に記載するということは、それなりの根拠を持っているからなのです。『これだったらいいだろう』、『このくらいは大丈夫だろう』は、あなた方の感覚であり、決して居住者の感覚ではありません。こんなキズくらいと思わないで下さい。その考えが、いつしか大きなキズを生みます。居住者の視点を必ず持ってください。それが 『終わった後で喜ばれる工事』 に繋がります」

 

   ――――――――

 

実際の現場では、コンクリートの床面以外にも、アスファルトやインターロッキング、土などの場合があります。

 

土以外は、どんなに古くても部材などが当たれば、多かれ少なかれ削れて白く傷付きます。
インターロッキングは割れる可能性も出てきます。
必ず養生を行いましょう。

 

では土ならば大丈夫でしょうか?
土は軟らかいので、部材を積み重ねると、下に沈んでいきます。
そうして全て撤去すると、キレイに部材の形で凹みます。
ひどいときは土に入り込み過ぎて、下の部材は掘らないと取り出せなくなります。
部材が汚くなるということも考慮し、やはり下に板を敷きましょう。

 

 

そして一番考えなければならないのが、「居住者がみたときの印象」です。

 

汚さないように、キズを付けないように、様々な場所を養生するのが大規模修繕工事です。
それなのに、「あれ?地面はキズ入ってもいいってか?」と思うものです。

 

その感覚を、施工者が持てるか持てないかで、Oさんのいう 『終わった後で喜ばれる工事』 かどうかが分かれます。

 

 

 

 

 


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